Mis2 scene3 | ナノ




──scene 3



「あらあら、やっとあたしたちに気付いたみたいよ」
「やっとかよ」
「どうせ底辺の連中なんでしょ。この際手柄立ててやろうみたいな」
「うっわー、つまんねえの」


 武装した集団は、建物の影に隠れるようにして隙を狙っていた。それ故に機動性が足りず、爆弾をいくつか投下してやればあっという間に混乱に陥ってしまった。
 こんなに堂々と走り回ってるのにね、とリンはレンの後ろでわざとらしく溜息を吐いた。


「それは褒め言葉か?」
「どの辺がそう聞こえたのよ」
「俺の運転テクニックを褒めたのかと」
「今更褒めるまでもないじゃない」
「それもそうだ」


 レンは口元を歪めると、尚一層──バイクのアクセルを踏み込む。
 その後ろに跨ったリンは、細腕でサブマシンガンを軽々と構えて、乱射する。
 二人の目立つ組み合わせは敵陣の只中で半端なしに目立つものではあったが、敵陣の真っただ中であるが故に同士撃ちを恐れる集団は捉える事が出来ない。近付く者は撃たれ、またバイクに轢かれそうになる。
 建物の影に隠れようとも、正確に回り込んで倒していくのは彼らが耳に嵌めたイヤホンから常に情報が流れているからだ。左耳からは彼らの無線、右耳からは、内部であちこちに仕掛けてある隠しカメラからの映像を見ている仲間からの、情報。
 どんどん、地上に立っている人数が減っていく。が、危険なのはここから。
 向こうにすれば、仲間が減れば同士撃ちの虞が減るのだ。


「き、貴様らァ!」


 案の定ライフルを構える男の影。リンは冷静にその男を見ると、一発だけ撃つ。乱射された弾丸を受けることなく、正確に男が倒れた。
 そんな光景が、増えていく。


「乗り物だ! タイヤを狙え!」


 上ずった声が、まともに思える命令を下す。しかしタイヤが狙えるのならそれに乗っている人物二人などとうにお陀仏だろうに。
 バイクは地の利を生かして建物の影から影へと移動し、細かにハンドルを切り弾丸を器用に避ける。後方からは冷酷無比な弾丸や手榴弾が雨あられと降り注いでいく。


「そろそろ来るわね」
「ああ」


 独り言が重なったような会話は、二人の耳にしか届かなかった。その言葉を合図にしたのか否か、突然。
 一台の車が残党の中に突っ込んだ。



20120901