Mis2 scene2 | ナノ
──scene 2
まずメイコさんがしたのは、モニタがいくつも連なるデスクに座ることだった。意味不明なたくさんのボタンの一つを押して赤く点灯させると、インカムのマイクを口元に引き寄せた。
「あー、あー。外の愚か者たちに告げる。今すぐ武装を解いて……面倒くさいわね、尻尾巻いて逃げるなら、殲滅は見逃してあげるわ。首謀者は捕まえるけどね。考える時間を三分あげるわ。尤も、あんたたちのその残念な頭にまともな思考回路が入ってるとは思えないけど」
ぱちん、と赤いマニキュアに縁取られた指がボタンを押した。どうやら外に向かって放送していたみたい。にしても随分と……喧嘩腰な。
そう思ったのは何も私だけじゃないみたい、すっげぇ殺し文句、と、少しだけ呆れが交じった口調でレンさんが言う。
「あんたたちのために言ってるんじゃない。暴れたいんでしょ」
「あら。メイコわかってるじゃない。ね?」
「こりゃご期待に応えないとなぁ?」
「もういいからさっさと準備して来なさいよ」
「はーい」
行くぞリン、とレンさんが声をかけると、リンさんはお兄さんに投げキッスを贈った。随分様になっている。レンさんが呆れたようにリンさんの頭をこつんと人差し指の第二関節で突いて、外へと出ていった。
「あ、あの、私は」
「ごめんねミクちゃん。ちょっと忙しくなるわよ」
「はぁ……」
どうすればいいんだろう。とりあえず何もせずに突っ立っているしかすることがないんだけど、何も言われないってことはこのままで良いってことよね。
心の中で納得しながら、手持無沙汰に辺りを見回す。
モニタが立ち並ぶ室内に、デスクが無秩序に並んでいる。応接間のようなソファーとテーブルがある一角に、コーヒーメーカーが一つ。物が少ない部屋だ。しかも結社というわりには広くないし、人数も…メイコさんとお兄さんと、ハスキーヴォイスの女の人の三人だけ。小規模なのかしら。
「さてと。三分経ったわね」
「めーちゃん、なんだか外が騒がしいよ」
「あらあら、悪い子だわ」
白々しく会話を繰り広げる二人が見ているのは、どうやら外と繋がっているらしいモニタ。騒がしいって言うか…思いっきり、銃乱射してない? この部屋が一体どうなっているのかはわからないけど、気のせいか遠くから音が届いている。
メイコさんがさっきのボタンを押した。
「じゃあこれから殲滅に入るわよ」
その声がした瞬間──モニタが爆発した。
「!?」
と思ったのは、そのときだけで、よくよく見ればモニタが、ではなく、モニタに映し出された光景が、だった。
砂煙が晴れる頃には、累々と積み上がった人の山。
「死んではないはずよ。うちは一応表向き『正義の味方』で通ってるからね」
私の動揺を悟ったのか、モニタを見たままメイコさんが口にした。
モニタの中では、さっきまで銃を乱射していた人たちが慌てふためいている。どこからやってきたのかわからない、爆弾。
敵は、どこだ。
「さぁてと。あたしたちも移動しましょうか。ミクちゃん」
「は、はいっ」
「そんな緊張しなくても、別に取って喰いはしないわよ」
メイコさんは立ち上がって私を見た。
「脱出開始、ってね」
20120831