Mis2 scene0 | ナノ




──scene 0



「そろそろ来るわね」


 短い髪の女が、自分の腕時計を見て口に出す。それは独り言ではあったが「そうだね」という相槌のおかげで独り言になることなく、女は苦笑いしつつモニタに目を向けた。


「それにしても、また随分と派手にやってくれたわ」
「ええ……また私の仕事が増えました」
「全く、事後処理も大変だってのにね」


 今度の相槌は先の男声ではなく、少しハスキーな女声だった。世間話をしながらも、女の手はキーボードを踊るように跳ね回る。
 インカムからは、車の音が届いていた。



20120829