Mis11 scene0 | ナノ




――scene 0



 彼と彼女は、婚約者でした。
 彼は、下級貴族の末息子。
 彼女は、上級貴族の末娘。
 けれど彼は彼女に興味がなく。
 彼女は既に二人の婚約者と自ら婚約破棄に仕向けていたため、三人目の婚約者に対しても思うことはひたすら冷めていました。
 あるとき彼女の生家が焼け落ち、彼女は国を出ました。
 彼の家も彼女の家との縁談が最後の頼みの綱のような状況だったので、いずれ没落しました。
 彼は、ある親戚に引きとられることになりましたが、酷い虐待の数々に耐え切れなくなり、思う存分暴れ回った後に国を出ました。
 そして二人は、縁もゆかりもない国で再び廻り合うことになりました。
 家の縛りがなくなった二人は――


「レンはあたしに興味ないもの」
「こいつは俺に興味ないからな」


 さて、


「ねぇ、ミク」
「なぁ、ミク」


 彼らは問います。
 楽しそうに。
 嬉しそうに。
 幸せそうに。


――どう思う?







20160529