Mis10 scene?? | ナノ





――scene ?





 飛び出していった車を窓から見下ろして、私は一人くつくつ笑う。もうすぐ、もうすぐ、彼女の敵たちがここへやってくる。それってなんておかしい。
 ここは私のお城だった。作ってほしいものがある、それさえ作ってくれれば何をしても良いと言われてやってきた。でも、それも今日で終わりかしら。
 思いの外早く、壁の向こうで何かごそごそしている気配が近づく。ああ、迂闊にトラップに引っ掛かっては駄目なのに。ぼんぼんと爆薬を発動させる音が響いて笑ってしまった。それが聞こえたらしく、壁の向こうの気配が一瞬止む。
 それから怒号が、壁を叩き壊し始めた。どうせこの建物も仮住まい、それほど丈夫に作られていないから、すぐに壁が崩れる。向こうから顔を出した武装した集団が飛び込んでこようとして、怯んだのがわかった。


「ようこそ、私のお城へ」


 彼女を見習って、演技めいて両手を広げて見せる。彼らが見たのは壁や棚じゅうに飾られている顔だろう。私の可愛い作品だ。


「ひ、怯むな! 偽物だ」
「あら、失礼ね」


 わらわらと男たちが銃を突きつけながら私を囲む。抵抗する気はない。両手をあげて恭順の意を示した。


「ひっ! な、な、なんだ、これ……!」
「手荒にしないで頂戴」


 べちゃ、と、顔が落ちた。一人が私の作品に触れたらしい。ごろごろと転がった首は私の足元で止まる。空虚な目が虚空を睨んだ。


「繊細なんだから」
「どうした!?」
「て、手触りが……」
「た、隊長、これ……! 本物です! に、人間のひ、皮膚……」
「失礼ね」


 嘆息する。まさか、人間の生首を飾り立てる趣味があるとでも思われたのだろうか。


「生首に興味なんかないわ」


 中身はちゃあんと詰め物してるじゃない。
 首を竦める。誰かが叫んだ。


「お、お前、み、み、見覚えがあるぞ! お前は……!」
「あら、死刑台でお会いしたかしら? でも残念ね、私、人間の目にしか興味がないの」


 目を飾り立てるために顔を作ってるだけ。他意なんかないわ。
 私はこっそりと足を移動して、


「さようなら」


 さっきリンが言った言葉。もう会うこともないだろう。別に構いはしない。マッドサイエンティストだの殺人鬼だのと騒がれて、どうせあのとき、メイコに拾われなければ電気椅子に座っていたのだから。
 でも、そうね。
 あの子とは、気が合いそうだったのに、残念だわ。

 椅子の足に取りつけた起爆スイッチに、足で触れた。












20160528