Mis9 scene5 | ナノ





――scene 5



「あのおうち。昔、あのおうちでご夫婦が殺されたらしいわね」
「じゃあミクが見つけたのはその夫婦の骨か」
「違うみたいよ。あの後も家の中から何人もの男の骨が出て来たんですって」
「ホラーじゃねえか。住処にしてた連中でもいたのかよ」
「どうかしらね」


 食事時にするべきではない会話を平気でしているレンとリンは、くすくす笑いながらステーキを食べている。なんというか、とても素敵な精神力。そんな会話を目の前でされて見る間に食欲のなくなった私は、フォークを置いてお茶を飲んだ


「ねぇ、見つけた骨ってどこの部分だったの? 頭? 踵? 尾骨?」
「知らないわよ……ていうか覚えてないもの」
「残念」
「ていうか知ってどうするつもりなの」
「どうもしないわよ」


 もう、と、席を立つ。


「ミク、残ってるわよ」
「いらない。片付けといて」
「じゃあレン、これ食べて。あたしミクの食べるから」
「お前も残し過ぎだろ。俺無理なんだけど」


 そんな会話を後ろで聞いて。
 食堂を出た。かつ、かつ、階段を上る。少し、聞きたいことがあったから。
 その部屋のドアをノックもなしに開けた。


「突然どうした」


 すぐそこに、神威さんがいた。まるで私が来ることを知っていたみたいに。


「聞きたいことがあるの」


 後ろ手にドアを閉めて、神威さんを見る。彼は私から少し距離をとって壁に身体を持たせかけた。


「あのとき、あなたは直前になって私が持ってたナイフを飛ばしたわよね。あなたが言ってた『別件』って、何?」
「別件?」
「別件から事件を追うって言ってたじゃない。とぼけないで」
「あの家だ」
「家?」
「ああ、興味深いと思わないか。あんな廃屋を、ずっと放置している。本来なら景観を破壊しているからすぐに建て直しなり売却なりするはずだが」
「……殺人事件が起きたからじゃないの」
「それがどうした? 物好きはいくらでもいる」
「でも、それと今回の件は関係ないじゃない」
「同じ件を追っているといっても、俺の本来の目的は別だったからな」
「え?」
「お前、俺を疑っているのだろう」
「っ、だったら、何よ」


 面白いものでも見るかのような目を向けられて、完全に確信していることがわかる目を向けられて、しらばっくれるのは無理だと瞬時に悟る。拳を固めて睨み据えると、挑発的な笑みが浮かんだ。


「証拠はあるのか?」
「な、ないけど……本当に、裏切ってるの」
「どうだろうな」
「馬鹿にしてるの?」
「さて。止められるものなら止めてみれば良いだろう」


 完全に馬鹿にされている。むかついたために、私は神威さんを指差して叫んだ。


「見てなさいよ!」


 盛大に捨て台詞を吐いて神威さんの部屋から脱出。
 本当にむかついた。いつか化けの皮を剥いでやると誓う。








20160522