終 | ナノ


終 



 ちゅん、ちゅん、と小鳥が囀る声。風がさらさらと木の葉を撫でていく。甘い花の香りと緑の匂い。たゆたうような時間の流れ。横たわる俺の足元に流れる小川の清流が、心地良い。
 さく、と地を踏みしめる柔らかい足音。ゆっくりと近付いて、俺の頭の上辺りで止まる。
 その足音のひとを、知っていた。
 目を開けると、彼女がいた。俺の頭のところに座りこんで俺を覗きこんでいる。
 零れる涙。ああ、なんて。
 なんて、綺麗だ。
 手を伸ばして、彼女の後頭部に手を添える。抵抗も無く落ちて来た唇を受け止めてから、視線を絡めた。


「リン」


 ずっと、不思議なくらいに、ずっと。


「あなたが好きです」


 ぽた、ぽた。宝石のように流れる涙が光を閉じ込めている。彼女がはにかむように笑った。


「はい」


 鈴を転がすように。頷いて。
 そして、言った。


「あたしも、あなたが好きです」









20160515