Mis9 scene2 | ナノ





――scene 2



「悪趣味だな」
「でしょう!?」


 取り敢えず三人で、見つけたレストランに入って食事がてら情報交換をする。どうしてこの街にいるのか、何をしているのか。驚いたことに、神威さんも同じ件を追っているらしい。メイコさん、頼んだの私たちだけじゃないんだ。


「そうですか? ミクにひっかかるなら、相当趣味良いと思いますけど」
「ばか、そういう話じゃないわよ。私みたいないたいけな女の子を囮にする話でしょ」
「……いたいけ、か」
「僕、ミクのそういう真顔で冗談言っちゃうとこも好きだよ」
「そこの男二人、踏み抜くわよ」


 何故か沈痛な表情をした神威さんと半笑いのミクオを睨みつけてやる。SOJの人たちは癖っ気の強い人ばっかりだから、私だって態度は強く出るけど、それ以外は普通の女の子なんだからね。リンみたいな戦闘能力を期待しないで欲しいものだ。


「で、神威さんは何か掴みました?」
「お前たちは?」
「残念ながら、何も」
「ひたすら歩きまわってましたからね」
「そうか。なら、良い」
「え……?」


 なら良い、って、どういう意味だろう。なら、「聞かなくて」良い、とか、「情報交換するものもないなら自分が言わなくて」良い、とか、そういう意味だろうか。それとも。
 私たちが情報を得ていなくてよかった、と、そういう意味……だったら?
 指先が冷たくなる。思い出したのは、いつかの夜、メイコさんが酔っ払いながら言った「うらぎりもの」の言葉。
 一緒に聞いていたミクオとも、それを話題に乗せたことは今までついぞなかった。でも、どうしてだろう。今それが、すごく気にかかる。そうだ、あの紙。神威さんとリンとレンが戦って、本部が酷い有様になってその後片付けのときに、神威さんが窓の外に捨てた「ごみ」。どうして、この人はあのとき、ごみを窓の外に捨てたのだろう。あれは、いつ、あそこからなくなった?


「ミーク」
「は?」


 隣から声をかけられて、顔をあげると、何故かミクオの顔が迫って来た。え、なに、ちょ。びっくりして固まってしまったら、額にちゅっとリップ音。


「な、何するのよ!」
「眉間に皺寄ってたから」
「はい!?」
「あ、勿論口実で、ちょっとキスしたかった。唇の方がよかった?」
「神威さんわかりました今回の事件の犯人こいつです」
「酷い!?」
「ふむ。お前ならやりかねんな」
「あー、僕かなり偏見持たれてるよね」
「偏見かしら」


不服そうな顔をしたミクオを無視して、雑談を切る。神威さんはその特徴的な袖を裁いて優雅にお茶を飲んでいる。今更だけど、かなり目立つわよね、この格好。忍び切れてないというか。調査だっていうのに目立ってどうするのかしら。


「お前たち、これからどうする気だ?」
「どうするって」
「囮で成果が出ないようであれば、方法をかえるしかあるまい」


 それは、そうだけれど。でも一体、どうしよう。私に期待されたのはこの容姿で犯人を釣ることで、それ以上なんて私にも出来る自信がない。


「……仕方がない、踊ってやるか」
「神威さん?」


 神威さんは少々眉間に皺を寄せつつ立ち上がる。なんというか、すごく嫌そうだ。ミクオも同じような顔をしている。この二人、そんなに馬が合わなかったのだろうか。


「被害者の方に話を聞こう。お前がやれ」
「私!?」
「男が聞くわけにもいかないだろうが」
「そりゃそうだけど」


 そうなると、私一人での仕事になるかしら。どうすればいいのかしら、こんなの初めてだから、うまい聞き方なんてわからない。

 結果的には、でも、悩む必要なんてなかった。それを今の私は、知らない。















20150131