Mis8 scene3 | ナノ





――scene 3



「ああ、知らないの?あの二人、本当にきょうだいだよ」


 と、グミさんが何と言うこともない顔で言う。ぽかん、と口を開けたのは、私もミクオも同じ。
 談話室で、休憩中のグミさんと私とミクオ。そういえば、と、私はグミさんにレンとリンの関係を聞いたのだ。それは世間話以上の意味はなかったし、ついこないだ読んだSOJ新聞の嘘八百ゴシップなんて思い出しもしなかったんだけど。ただ、カイトさんのシスコンがひどすぎて私にとばっちりがくる、と愚痴っていたら、レンも酷いよねぇと飛び火したのだ。レンも妹いるの、と聞けば、リンだけど、と言われて絶句した。


「えーっと……そっか、随分スキンシップが激しい兄妹なんだね。あれ、どっちが上?ああ、ベッド的な意味じゃなくてね」
「やだ、ミクオくんそれセクハラ。リンのが年上だよ。腹違いだけどね」
「へぇ」


 どうしてこいつは平然と会話を続けられるんだろう。あほじゃないのか。そして日に日に酷くなっていくセクハラ発言に私はこいつを殴りたくなる。


「ミク、顔真っ赤。可愛いけど大丈夫?」
「あんたの頭の方が心配よ」
「あ、気にかけてくれるんだ」
「皮肉ってわかる?」
「ミクオくん頑張れー」
「もうちょっとなんだけどね」
「なにがもうちょっと!?」


 ああもうやだこの二人。
 頭を抱えそうになりながらも、なんとか軌道修正を試みる。


「で……あの二人が姉弟って」
「ここの人なら皆知ってると思うよー。そっか、二人は新入りだから、知らなかったんだね。外に漏れると、いろいろあれだから黙ってるけどね」
「漏れちゃ駄目なの?」


 まぁ……スキンシップ過多というかあの距離感は完全に恋人のそれだった。キス、してたし。だから、漏れたら騒がしくなるだろうというのはわかる。と、訳知り顔で思っていたら、


「楽しそうな話してるわね」
「俺らも混ぜてくれよ」
「ひっ!?」


 両側から肩を抱かれて、飛び上がってしまった。見てみれば話題沸騰中の二人で、心臓がばくばくだ。


「やぁリンとレン。今きみたちの話してたんだよ」
「聞こえた。そっか、お前ら知らなかったんだ」
「不健全でごめんなさいね」
「リン、完全になんとも思ってない謝罪だよね」
「そうだけど、何か問題?」


 リンが挑発するように首を傾けた。同性の私でもどきっとする仕草、というかさっきから二人して近いんだけど。リンは香水の匂いがするし、レンは機械油の匂い。いい加減に放して下さい。


「いやいやいや、経緯を聞いて良い?」
「経緯っていうかねぇ?」


 リンとレンが私を挟んで意味深な視線を向ける。いや、見つめ合うのは構わないんだけど、私邪魔じゃないかしら?!


「調べたらわかると思うんだけどね。こないだ、ハクちゃんのことあったでしょ?」
「ああ、うん」
「あのいけすかない男と、同郷だったのよ。顔はお互い知らないけどね、出身国が同じだけで」
「そうそう。父親が侯爵だったんだよな」
「潰れちゃったけどね」
「もともと落ち目だったけど、それに拍車をかけたのが俺たちのスキャンダルってわけで」
「いくら腹違いでもねぇ?」
「で、逃げてきたってわけ」
「……それは……壮絶ね……」
「だろ」


 ぱちん、とレンがウィンクをする。もうなんて言ったらいいのかわからない。開き直りすぎなんだけどこの人たち。


「新聞沙汰にもなったからなー」
「さすがにあの国にはいられないわよねー」
「純愛だねー」


 そしてミクオの感想、どうにかならないのかしら。この場で常識人は私だけみたいで、もうどうしたらいいかさっぱりわからない。わからない上にわからない。
 それから繰り広げられた会話は、もうなんというか、赤裸々すぎて、耳を塞ぎたかったんだけど、両側からがっちり腕を取られていたから駄目だった。ミクオは平然と聞き返すし、グミさんはいつの間にかぐーすか寝てるし、リンとレンは私の頭の上でキスまでするし、なんというか、誰か助けて欲しい。真剣に。














20141206