Mis8 scene2 | ナノ




――scene 2



「ちょっとグミちゃん置いてくなんて酷いよ! わたしここの拠点初めて来たんだからね!」


 騒々しくドアを開けたのは、案の定先ほど知り合ったばかりで尚且つたったいま衝撃の事実が告げられたばかりのグミさんだった。なんと両手にそれぞれリンとレンの手を引っ張っている。リンは苦笑気味で、レンは顔が引きつっていて、あの二人を振り回せる人物がいたことにびっくりした。
着替えて来たらしく、さっき見た迷彩柄の服じゃなくて簡単な作りのワンピース姿……かと思いきや、グミさん動きが大きいから無駄にくるりと振り返ったときに見えた後ろ姿にぎょっとした。背中開き過ぎだわ。
 メイコさんが相変わらずうるさいわねと苦笑い気味に独り言を漏らした。


「ま、グミちゃんのことですから? もうとっくにここの見取り図は頭に入ってますけど」
「それを活用できるかはまた別問題だろーが」
「おやおやレンくん、ご機嫌斜めですか。言っとくけどね、きみたちが乳繰り合うのとグミちゃんが無事に目的地まで辿りつけるのだったら、後者のほうが大事なんだからね」
「ふざけんな。永遠迷ってろ」
「乳繰り合ってるのいつもなの、知ってるんだからね。グミちゃんをあんまり舐めないでよ」


 ……わあ……もしかしてこの子、二人がいちゃついてるところに突入したのかしら。だとしたら猛者だわ。怖くて真偽は問えないから、聞かなかったことにしよう。
 そう思ったのは私だけらしく、ミクオのやつが面白そうに、へぇ、と口を出した。


「さすが情報屋。そっち方面も承るの?」
「デバガメは趣味じゃないよ。でもやれって言われたらやるよ」
「プロだね」
「リンとレンのは、ほんとにいつものことだから、引っ掛かりやすいの、こっちの情報網に」
「あー」
「あら、閨に興味があるの?」
「見るだけなら見せてやっても良いけど?」
「何なら混ざっても良いのよ」
「あはは、魅力的なお誘いだけど、後が怖いから遠慮するよ」


 ……際どい。私は書類に目を落として聞かなかった振りをした。多分バレてるけど。


「爛れたコトはよしてほしいとこだよ。そういうのもぜーんぶ引っかかっちゃんだから」
「デバガメはしないくせに?」
「しないけど、引っかかっちゃうものは仕方がないでしょ。わたし情報屋だよ。集めるのは得意だし、勝手に集まってくるものなの」


 グミさんはここで、大人びた仕草でふぅと息を吐いた。いくつなんだろ、とふと気になる。


「だからきみのことも知ってるよ。ミクオくん」
「たとえば?」
「御年十九歳。父親は銀行員、母親は農家出身の一般家庭に一人っ子で生まれて、小さい頃はまぁ天才児なんて持て囃されてたみたいですね。いろいろあって、若干十五歳にして××大学にスキップで入学、二年後首席で卒業。いろいろ割愛するけど、まぁ華々しい学歴だよね」
「……詳しいね」
「一応調べてもらったからね」


 と入って来たのは、メイコさんだった。


「社員の身辺調査、一応皆通ってるわよ」
「え、じゃあ私も!?」
「そりゃ勿論」


 調べられて困ることはないけど。ここ数年に関しては。
 それより前は……自分でもわからない。覚えていないのだ。もしかしてそれも、調べがついてるのかしら。自分のことだけに、少し気になった。
 けれど、それを聞く前にミクオが喋ったから、聞く機会は流れてしまった。


「で、僕はどうでした? メイコさん」
「グミが調べてくれた結果、真っ白よ。ようこそSOJへ」
「安心しました。あ、僕がいつまでおねしょしてたとかは調べてませんよね?」
「……えへへ」
「え、ちょっと」
「冗談だよー。無駄な情報は、もし拾ってても忘れちゃうからね」
「この子情報収集に関してはすごいけど、方向音痴と味音痴と記憶力のなさでプラマイゼロなのよね」


 メイコさんがけなしたけれど、何故かグミちゃんは胸を張っていた。ほんの数十分の接触だけど、私の中でグミさんの印象が決定。不思議ちゃんだわ、この子。




















20141025