Mis4 scene2 | ナノ





――scene 2



「はぁい、そこまで」


 語尾にハートマークがつく勢いで可愛く割り込んで来たのは、見慣れた小柄な少女。リン、だ。リンは、男の子に取られたままの私の腕を取って抱え込むと、にこりと挑発的に笑った。


「この子を助平親父から助けたところまではよかったけど、そこからのナンパがあんまり下手過ぎないかしら?」
「別にナンパしてたわけじゃないけど……そこまで言うなら、君が相手してくれるの?」
「あたしは高いわよ」
「いいね。安売りしないのは好みだよ」
「貴方の好みなんて聞いちゃいないけど。でもまぁいいわ。ここは丁度よくいろいろあるし、遊びましょっか」


 なんというか……すごく危ない空気。ぴりぴりとしたムードに、白旗振って逃げたい気分なんだけれど、リンに腕を掴まれているから無理なわけで。ていうか、あの、ちょっと胸当たってます。女同士だけどリンの雰囲気のせいかどきどきしてしまう。


「いいよ。何して遊ぶ? クラップス? ルーレット? ブラックジャック?」
「気が早いわね。いいけど、こっちが勝ったら、ミクにちょっかいかけたこと土下座で謝ってもらうわよ」
「あはは、いいよ。じゃあ僕が買ったら、一晩付き合ってもらおうかな」
「あら、一晩だけで良いの? 随分謙虚だわ」
「ゲーム一回につき、だけど?」


 逃げたいガチで逃げたいほんと逃げたい誰か助けて。私はこの人たちとなんの関係もありませんねぇ遠巻きに見てる人たち!


「じゃあ――ポーカーにしましょ」
「いいの? 僕得意だけど」
「そうなの。なら、見ていて楽しめるかもね」
「え?」
「誰が、あたしがするって言ったかしら」


 リンが言うと同時に、かつり、と硬質な靴の音が響いた。


「ポーカーとか俺聞いてねえんだけど」
「だってあたし、それしか知らないもの」


 やってきたのは、当然のようにレン。上等なスーツに小洒落たシャツを合わせて、何この伊達男。誰。という具合。いつも油まみれになって車やバイクの調整しているから、何だか新鮮。


「この男に勝ったら、いくらでも相手してあげる」


 相変わらず、リンの語尾にはハートマークがついていた。
















20140613