Mis4 scene0 | ナノ





――scene 0



 私は夢を見る。あたりは一面血の海で、ごろりと転がる人が、一人、二人、間に転がる肉片。指がばらばらと落ちて、今にも動き出しそうだと思う。
 私は夢を見る。人の塊や肉の塊が、起き上がって、私に手を伸ばす。こわい。こわい、こわい、こわい、こわい。やめて、こないで。覆った手の間から見える、狂った笑み。
 わたしは夢を見る。走り出すと、ぴちゃぴちゃと水の音。振り返れない。振り返ったら、取り返しのつかないことになる。にげなくちゃ、にげないと、わたしは。
 わたしはゆめをみる。ここはとても、こわい。こわくて、こわくて、どうしようもなくて。

 わたしは、ゆめを、みる。






「ミク!」
「へ……あ、リン」
「やっと気付いた」


 目の前で呆れたように、リンが肩を竦めた。瞬きを繰り返すと、段々と戻ってくる現実感。ああそうだ、私、仕事中。
 リンと一緒に、次の仕事に関する資料を纏めているところだった。慌ててごめんと謝ると、リンは綺麗な目をぱちくりとさせた。


「どうしたの、ぼーっとして」
「うーん、最近夢見悪くって」
「暑くなってきたせいかしら」
「寝苦しいよね」


 ふふ、とリンが笑った。暑くなって、こうして作業しているだけでも汗をかくのに、リンは涼しげに見える。いいな、羨ましい。私なんか汗でべったべたなのに。ちょっと、臭いが気になる。


「後で聞かせてね」
「え?」
「夢の話。人に話すと、楽になるわ、きっと」


 これで、私より年下なんて信じられない。気遣う雰囲気は、すごく大人びたそれで、なんか酷く負けた気分。華奢なドレスから伸びる手足は細くて儚げで、守ってあげたくなるよう。勿論、リンが強いのは十分すぎるほど知っているけれど。


「その前に仕事ね」


 資料を抱えてドアを開ける。その拍子に風が入って、書類が舞った。慌てて拾い上げたその紙に書いてあるのは、今回の仕事内容。


「ごめんね、ミク。大丈夫?」
「うん、平気。行きましょ」


 場所は、違法カジノ場。







【MISSION 4】
――Start.

















20140607