short | ナノ


attention!

わかなは陰陽師という存在を一切知りません。
某○ィキ○ディアで調べたら、余計に訳が分からなくなったので、取り敢えずわかなの思う陰陽師パロディで進めたいと思います。
偏見ありまくりです。

この小説内では、陰陽師は「化物を封印する力を持つ存在」としています。メルヘンです。わかなも意味が分かりません。
化物もよく分かりません。
舞台は平安時代となっています。リオグレその他の名前の不自然さは無視してやってください。どちらかというと、「何となく和風っぽいけど異世界な感じの世界」という世界観で読んだ方が読みやすいかと思います。

リクエストに配役設定が無かったので、取り敢えず(わかなの考える)陰陽師を、好き勝手に書かせていただきました。
その結果、個人的にはリオグレが濃いかなと思いますが、結果的にはくっつかない、未満な感じで終わる予定です。たぶん。
あとシェリーのレンとの婚約設定は忘れてください。ガルナ島あたりの関係にしておいてください。

先に言っておきます。
ごめんなさい!!

何でも許せるよ!という勇者様はどうぞレッツスクロール。




戦乱など縁の無い、平安の時代。

貴族が権力を奮い、彼等は贅沢の限りを尽くす。
身分を勝ち得た一部の者だけが全てを手にし、娯楽に興じる。
金さえあれば、権力さえあれば何もかもが手に入る。
ある者は、月が欠けることさえ無ければ、この世は我のものとも思うのに、と詠んだ。
一部の者が全てを手にした世界。戦乱が無いが故に、何かが変わることも無い世界。

―――そんな世界に、雫を落とす存在が、一つだけあった。

「また、被害が出ただと?」

一際豪華な成りに身を包んだ男が、報告を寄越した女性に問う。
屋敷の中でも細かな手入れが行き届いたその一室は、男が一族の主であることを示していた。
荘厳な屋敷を治める主らしい雰囲気を纏った彼は、切れ長の瞳をきりりと細めた。
その統率力は絶大で、彼の周りには彼を慕う者が絶えない。
今目の前で跪く少女も、そんな彼―――リオンに魅入られた一人だった。
然と顔を上げ、美しい顔立ちを凛と張らせる。

「はい。既に被害は我々の近くにまで及んでいます」
「そうか…」

一体どうしたものか、と思案を巡らせるリオンの、その思案の対象は。
―――近頃世を騒がせる、"化物"と呼ばれる謎の存在についてだった。
人々を襲う訳でも無く、只煌びやかな建築を破壊するだけ破壊し、そのまま去っていくという余りにも不可思議な存在。
姿を隠そうともしないものだから、その姿形を見た者は大勢居る。
ある者は尻尾が生えていた、と言った。
ある者は角があった、と言った。
そしてまたある者は、見た目は普通の青年だった、と言った。
そんな存在がこの世に存在するというのだから、今まで暗闇を見てこなかった哀れな権力者達が騒ぐのも無理はないのかもしれない、と思う。
それに、その存在が権力そのものを示していた己の建築物を破壊されたというのだから、憤るのも判る。
そしてその被害が我等にも近づいているというのだから、早急に何かしらの案を打たなければならない、ということも。
しかし標的の得体が知れない以上、対策を練るにも方法が無い―――。
貴族達が頭を唸らせるそんな世の中、名声を上げ出したのがとある一族の青年だった。

「如何致しましょうか、リオン様…」

不安に曇った表情のままそう言う少女も、主が出す答えは判っている筈。
しかしその代償故、心優しい彼女は認めようとはしないのだ。
―――しかし、これしか方法は無いのだ。自分の為、何より周りの人間にこれ以上危害を加えない為にも。
毅然と顔を上げ、リオンは口を開いた。

「―――フルバスターの一族に、依頼を送れ」

少女―――シェリーの顔が、僅かに歪んだ。





「お主、本気なのか?」
「…それ以外に、方法が無いからな」

杯を傾けるのは、リオンの良き相談役のような存在であるジュラ。見た目に沿った賢さを誇る彼は、リオンを常に支えてくれる、親のような存在だ。
基本的にリオンの意思を尊重してくれるジュラだが、今回のリオンの願いにははっきりとした答えが出ないようだった。

「そう急ぐ事も無いだろう。第一噂だけの存在を頼るのも、危ないのではないか?」

シェリーも心配が過ぎて不眠症になりかけているぞ。シェリアが愚痴を零していた。
心優しい少女の身を案じるジュラは、その反面でリオンの決定を否定するよう、暗に示していた。
しかしその想いに、応えることは出来ない。
一つ溜息を吐き、ふかふかとした暖かい椅子に沈み込む。

「噂は本当だろう。実際、奴の力で何体もの"化物"がやられて来たという話だ。第一―――」

水のように静かなその瞳を覗き込む。

「オレの身を案じてくれているという事は、ジュラさんだって噂を信じているのだろう」

そう問えば、ジュラが言葉に詰まる気配がした。
そのまま、感服だとでも言うように息をゆっくりと吐き出す。

「…まあ、儂だってその噂を信じていない訳ではないのだ。それだけの成果も上げておるようだし…だからこそ」

今度はジュラが、研ぎ澄まされたリオンの瞳を覗き込む。

「儂は、"代償"として要求されるものが、どうしても納得が行かぬのだよ」

それは、リオンがフルバスター一族に伝令を送って以来、仲間達に散々言われてきた事だった。

『フルバスターは"化物"を狩る代わりに、依頼主の命を代償として奪う』

彼等の一族は、都からは遠く離れた辺境の地で暮らしているという。
それ故、国の中心部ともいえるこの地に伝わってくる噂は、かなり不透明なものが多かった。
だからその力が真のものなのかも判らないし、代償と呼ばれるものが本当に存在するのかも判らない。
しかし化物退治の依頼を、彼等が完璧にこなしているのは事実で、だからこそ今、都には一人の青年の噂が囁かれ続けているのだ。
"代償"の噂も、もしかするとその不思議な力故に生まれた恐れなのかもしれない。
どちらにせよ、今は一族の力に賭けてみるしか無かった。

「だが、これ以上被害が出ては都も滅ぶ…それに噂が真実かも判らないのだ、一度その"陰陽師"に会ってから考える」

決意を秘めたリオンの言葉に、ジュラは深く溜息を吐いた。





「…リオン様」

震えるシェリーの声に、遂に来たかと、リオンの表情も硬くなる。

「お客様が来られております。お通ししても宜しいでしょうか」

「判った。通せ」

では、と掠れ声を残し、シェリーが離れていくのを感じた。
緊迫した空気の中、先日ジュラが残した言葉を思い出す。

『良いか?彼等が代償として要求すると云われているのは、依頼主の"命"だ』

類に見ない程真剣な表情で、迫るように言ってきた。

『もしも本当に要求されたならば、儂達を呼ぶのだぞ』

きっと身代わりにでもなろうと言うのだろう。
彼の狙いを何となく推測しながら、リオンはその言葉に頷いた。
―――だがしかし、例え本当に要求されようが、彼等を身代わりにさせる気などさらさら無かった。
弱肉強食の世界で、リオンはこういった辺りが異端だ。普通の当主ならば、部下を犠牲にすることなど日常茶飯事。所詮奴隷程度にしか思っていない。
しかしリオンは違った。自分を犠牲にしてでも仲間を、部下を守る、そんな当主だった。
だからこそこの屋敷は、他とは違う、暖かい空気を持っているのだろう。
ふと、シェリーと共に、感じた事の無い気配が、扉の前に佇むのを感じた。
―――まるで氷のような、美しくも鋭い、冷たい気配。

「入るぞ」

何の遠慮も無い、深い声が扉の向こうで響いた。

「ああ」

了承の返事を返す。
すると間もなく、礼儀も何も無く開け放たれる。
襖の向こうに居たのは、怯えた顔でリオンを伺うシェリーと、怜悧な瞳で突き刺すような視線を送る、美しい青年だった。
雪のように白い肌は、普段屋敷から出ない為に日焼けをしないシェリー以上に透き通っていた。
その白い肌と綺麗なコントラストを描くような黒曜石の瞳は、暗い色を湛えながらも妖艶な空気を纏っている。
職業着なのだろうか。胸元を大きく肌蹴させた藍色の着物は、青年の色気を更に際立たせていた。
思わず圧倒されたリオンを冷たく見据えながら、しかし青年は一切気後れせずに言い放つ。

「…で?アンタが此処の当主なんだろ?契約内容を訊かせてもらおうか」

当主となってからは聞くことが無くなった、無礼な物言い。
美しい容貌とは随分と掛け離れた口調に、思わず気圧されていた精神が一気に戻ってくる。
若干の苛立ちを感じながらも、リオンは客人を自らの前に立つように促した。
シェリーに下がれ、と目で促し、青年を招き寄せる。
やはり不安気な視線を送ったシェリーだったが、命令を察して再び襖の向こうへと戻っていった。

「…お前が、フルバスターの者か?」
「…そうだが?」

胡乱気な目で見てくる青年。

「依頼主、アンタなんだろ。さっさと内容を聞かせてもらおうか」

言っている内容は先程と同じでも、口調に混ざる棘は明らかに増えていた。
随分とせっかちなものだ。

「……まず、名前を聞きたいんだがな、客人」

会話も出来やしないだろう、と言えば、青年の綺麗な柳眉が少し上がった。

「別に言う必要なんかねぇだろ。フルバスターでも何でも呼べば良い」
「オレの屋敷では、基本的に名前で呼び合う。この依頼を受けた以上、貴様にもその掟にしたがってもらうぞ」

完全な出任せである。
そんな掟は一切無い。しかし何故か、リオンはこの青年の名前を知りたかった。
案の定、リオンの言葉を信じたのか、青年の顔が少し歪む。

「…んだよ、その掟……」
「それで、どうするんだ?オレはリオン、リオン・バスティア」

人に名前を聞く時は、自分から名乗るもの。
何処かで聞いたような台詞を思い出し、先にそう言ってみる。
すると青年ははあと一つ息を吐き、諦めたようにリオンに目をやった。

「…グレイ。グレイ・フルバスター」

グレイ・フルバスター。
告げられたその名をゆっくりと噛み締めながら、リオンはその美麗な青年をもう一度見遣る。
近頃この地で流れ始めた噂―――即ち、"代償として、依頼主の命を奪う"こと。
しかし目の前の彼は、そのようなことをする人間には見えない。
やや暗い色を湛えた瞳。その色がどういった状況下で生まれるものなのか、リオンはよく知っている。

―――大切なものを、失った眼だ。

「…それではグレイ。依頼内容についてだが」

自然に切り出せば、何故かグレイは驚いたように目を瞠った。

「……へぇ」

感心したようにぼそりと零された声を、当主の耳は聞き逃さなかった。

「何だ?」
「…いや、別に……あんたが初めてだ、そう言ったのは」


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