ヘッド×サカナちゃん 鳥籠越しに伸ばした指先は、いつも貴方に届かなかった。こんなにも近くに居るのに、こんなにも貴方は遠いね。冷たい鎖は甘い拘束、本当は初めから鎖が繋がっていないことをあたしは知っていたけれど。カタチだけの鎖、虚構の愛、それでもあたしは貴方がとても好きだったから。それでよかった、あたしは幸せだった。 「出ていってくれ。」 (貴方はそうじゃなかったのかな。) こびり付いて離れない声、貴方との思い出はとてもたくさん在る筈なのにいつも思い出すのはあの場面。あたしを解放した貴方の声はあんなにも泣きそうで、だからきっとあたしも泣いてしまったんだ。小さな鳥籠の中で泳ぐ方法は貴方が教えてくれたけど、涙の海で泳ぐ方法をあたしは知らなくて。溺れた声、嘘の笑顔、望んでは居なかったサヨウナラ。 (どうしてもあたしには触れてくれなかったあの指先は、一体どんな色をしていたのかしら。) まるで子守唄のように優しい声に包まれてあたしは夢の中、眠れない貴方は今夜も独り。(ごめんなさい、。)だけど夢の中でさえもあたしは貴方に触れることすらできなくて、伸ばした指先は空回り。そうして目が覚めた朝はあたしは独り涙に沈んでいて(、それでも)、泣き虫だねと笑う貴方が大好きだったの。 (ねえ、) 狭い狭い鳥籠から解放されたあたしはこんなにも不自由。甘い甘い拘束も、あたしを繋ぐ貴方の声も遠くて深い海の底。結局一度も貴方はあたしに触れてはくれなくて、愛の言葉のひとつすらも囁いてはくれなかったけれど。あたしは幸せだった。貴方と過ごした数日間で、きっとあたしは一生分の幸せを生きていた。 「あいして、た。」 届かない声、届かない指先。消えてはくれない貴方の泣き出しそうなサヨウナラ。今でも夢に見る貴方はこんなにも優しくあたしの名前を呼ぶくせに。やっぱり貴方に触れる直前で覚めてしまう愛(かな)しい夢。もう泣き虫だねと優しく笑ってくれる人はここにはいないのに。 届かなくても愛してた (うそ。ほんとうはいまでも、) 110303 水底の月様に参加させていただいた作品。私だけ場違い感がぱないですがヘドサカが愛しすぎて今夜も眠れないんだサカナちゃん歌ってくれないか状態が続…何が言いたいのかというと私はヘドサカをとても愛している。 誰よりも幸せになれる要素を持っているのに、どうしても幸せになれないふたりが愛しい。幸せになってよ。とりあえず挙式には呼んでください。 素敵企画をありがとーございましたっ!^▽^ |