thankyou!!

(ただいま1種のみ。)
※○○→レン(→ミク)

「ちゅーしよ。」

そんな馬鹿みたいな発言を思わず呟いた自分に吐き気がした。ぐるぐる視界暗転、なんだこれなんだこれなんだこれは。君の瞳がきょとりとまたたいて、またなんともいえない気持ちがやってきた。恐怖の大魔王並だっちゅーの今日和。

「…レン、私とちゅーしたいの?」

君がにやりと悪く笑う。何が楽しいのかけらけら響く。

「そっかー、そっかー、ちゅーしたいのか。」

反復してニヤニヤされる、中学生男子もいいところの馬鹿みたいに発情期発言。ありえない、しょうじきとってもありえない。が、口から出てしまったのもこれまた事実であって、君が繰り返すその言葉に顔の温度はどんどんあがっていく。ああ、恥ずかしい。恥ずか死ぬ。

「はは、ちゅーしたいのかあ…私、愛されてますなあ」

ころりぽろり。喋りながら笑顔と涙一粒ずつ。突然君の目から雨が降る。頬の熱が一気に下がっていくのを感じるある晴れた放課後の教室。これがもし、ああ、嬉し涙だとかそんなんだって分かってれば僕の頬の熱も下がらずにいれるのに、ごめんね、ごめんて。さっきまでの空気がいっぺんしたこの空気に肺が焼けた。

「ごめん…」

どうしようもなさすぎて、できることが少なすぎて、いつもみたいにとりあえずは笑ってみせる。君がぽろぽろ無表情で流すそれに何も感じれない自分が笑ってた。愛してますよ。ええ。それはとてもとても。だけど、

「一番は、私じゃないんだもんね」

キミが答えを呟いた。好きだよ、ほんとだよ。その最低な言葉はいくらでも簡単に吐けてしまうけれど、君がそれを望んでないことくらい知ってるから黙るしか選択肢がない僕はなんてちっぽけな勇者だろう。おいコマンド仕事してください。

「…ねぇ…っ」

「…」

「…ミクちゃんの変わりなんて、どこにもいない…ってわかってる…?」

黙り続ける僕に痺れをきらしたのか君が静かに口を開いた。ミクさんの変わり?なにそれ、なんだそれ?そんなものいないよ、知ってるよ、なのに、だから、わざわざいうなんて、うるさいよ。うるさいなあ。好きだけど、ちょっとうるさいなあ。残念な勇者は再び無言。黙るのコマンド選択連打を決め込んで。

「ミクちゃんを、そろそろ…諦めなくちゃいけないことも」

あーあ、無視、無視、聞こえないよ。

「あ…っ―…で、――い……っ」

雑音まじり、途切れボイス。

「     」

あげくのはてにはパクパク、口の開閉運動。空気を食べてる。これはいい、何にも聞こえないことにした。から、何にも答えないですみそうだ。ぐるぐるぐるぐる回る視界で、君がパクパク空気を食べて、僕はへらへら笑ってる。これはいい、なんて綺麗な世界だろう。あの子がここにいたら、ああ、もっともっとはっぴーなのに。…しばらくしたら、ずっとパクパク魚みたいに空気を食べてた君が口を一文字に結んだ。キュとした効果音が聞こえそうなくらいしっかりと。どうしたんだい?空気の味に飽きたのかい?僕はそれでもかわらず笑っておいた。

―――パチン。

気泡がはじけるみたいな音。脳が揺れた。マグニチュードの計測機なんて持ち合わせてないから、知らないけど、きっと人類滅ぶくらいの大地震。君の手のひらが真っ赤に染まってる。怒ったのかなあ。僕は君を怒らせてばかりだなあ。だから、とりあえずって言い訳の「ごめんね」を一つこぼして、君が諦めたように手を下ろすのを眺めてた。

「っ、ミクちゃんの変わりに、自分が幸せにならなくちゃいけないことも、レン分かっててやってるの…?」

…うん。うん。それでも僕は、

「…ミクさんを想えるだけで幸せなんだよ」

ミクさんが居るから僕は空気が吸えた。ミクさんがいたから僕はここに居られた。ミクさんが僕の世界で、あの子が僕の空気で、ミクさんが僕の居場所だった。ミクさんは地面だ。僕はなもない休息を求めた昆虫で、いつもみたいにミクさんに降り立ちたいのに雨がソレを邪魔してしまっただけの。君は花だ。降り立てない僕に休息を与えようとぬかるんだ地面にしっかり立っていてくれる、そんな花。だけどもだけども、

「僕は、ミクさんに還りたいよ」

差し込んだ夕日が君を隠した。





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