月と星と太陽と、空の涙と風の髪を編みこんで、ぜんぶあげるあなたにあげる。もしまた笑ってくれるというのなら、ぜんぶあげる、わたしをあげる。



糸が、切れた。
ふたりをつなぐのは真っ赤な真っ赤な血の色だけなのに、どうしてだろう。
とてもやわらかで甘やかで、ただどうしようもなく泣きたくなる。
ああ、切れた糸は行き場を無くしてふらりと揺らめく。
決別は緩やかだ。
終わりはもう、目蓋を閉じる。



「屍(かばね)になっても愛してくれますか」
「うん、」
「ならよかった」
「うん、」
「さあどうぞお好きに」
「うん、」
「あなたの望むままに」
(止まり木を喪った鳥は、羽ばたく事を忘れて落ちてゆく)(地に落ちた翼は、朽ちた樹と永遠になる)



あなたに貰った傷が疼くたび、きゅう。と心臓が締め付けられてしまいます。
このまま縮んでなくなってしまえばいいと思うほど、涙があふれてしまいます。



恋を知った獣はひとに成ろうとした。
しかしそれは阻まれいとしい指先は遠くへ行ってしまう。
ふたつを別つのは薄すぎるほど薄く、硬過ぎるほど硬い壁だけである。
獣はただのひとに成りたかった。
あのいとしい指先を握り締められる、ひとに成りたかっただけなのに。



求めた光は闇だったのか、はたまた求めすぎた愚かさが創りだした偶像だったのか。
問う問わぬを無くして最初から最後まで欺き通せば正解だったのだろうか。
やわらかなほほえみには、もう二度と会えないのだけれど。



*



君が花であればどんなによかっただろう
ただ朽ちてしまうまで存分に甘い水を与え、溢れるほどに愛を囁くというのに
君が鳥であればどんなによかっただろう
うつくしくさえずる喉を愛で、その短くもいとけない生の果てまで共に在れただろうに
きみが、きみ以外のものであればどんなによかっただろう
こうして焦がれることも、我が身を呪うこともなかっただろうに



冷たくなってから初めて気付くのだ
いかに請うていたか、どれほど欲していたか
このささくれた手が月の影を掴むように、太陽が決して裏側を見せてくれないように
なくしてから、気付くのだ
どれほど請うていたか、思い知るのだ



逃げる足音は軽やかだ
ふたりを絡め取ろうとする蜘蛛の銀糸を振り払って、はしる、ただひたすらにはしる
追われる身になろうとも、いずれは引き離される半身だとしても、今はただふたりで在れればしあわせだった
互いのぬくもりを逃がさぬよう、ひったりと掌を握り締めあうふたりは、ただただはしる、はしる
いつか。という言葉を忘れるように、ふたりはただ走りあった



生まれ変わりなんて信じてないわ、だってそんなものに縋り付かなければならないほど私達は不幸じゃないでしょう?
前世も来世も関係ないの
そんなことよりも、ねえ。ほんの少しだけでもいいから、あなたと手を繋げるほうが大事なのよ



あなたさえしあわせならばそれでいいのです
たとえどれだけさげすまれようと、おとしめられようと、なじられようがせめられようが
あなたさえしあわせならば、それでいいのです
それいじょうなど、どうしてのぞめやしましょうか



**



あなたを傷つけるのは、正しくわたしのてのひらでしょう
誰にも何にも奪われたくないと願う、夢も何も打ち壊したこのゆびさきだけでしょう



先の世なんて知らない
わたしはなんて小さい
明日なんて置いてきた
私はひとり蹲っていた
とろける恋情だけ頂戴
消えるのならいらない
あなたが居てよかった
居なければ、よかった



難しいことはわかりません
ゆびさきとゆびさきを合わせてちいさな世界を作りましょう
そしてその世界にただ誓うのです
ふたつが裂けてしまうのならそれが運命(さだめ)なのでしょう
ひとつに抗いふたつの終わりまでわたし達でありましょう
ちいさな世界に誓うのです
引き裂かれるなら、それでも恋すと



いくら泣き叫んでも無駄なのだとわかるまで暫らくかかった
抱き締めてくれた体温を求めることがこれほど困難だとはしらなかった



あの夜を憶えていますか
くちづけで水を与えあったあの星空を
ただ触れるだけで涙がこぼれたあの雲の切れ間を
決別を誓ってしまった、わたしたちのこころのいたみを



***



きみを求めるてのひらが、ゆびさきが、ぼくのすべてが、きみを美しいと思ったこころがきみを傷つける前に、どうか。どうか。



I like you. There is no lie. 
It comes to be painful though it is not a lie and to want to die. 
It comes to want to be dear of you and to die.
あなたが好きだ。嘘はない。
嘘ではないのに、苦しくて死んでしまいたくなる。
君が愛しくて、死んでしまいたくなる。



雨が降る。あなたにも、わたしにも。雨が降る。忘れたい記憶にも、戻れない日々にも。雨が降る。昇らない太陽にも、沈まない月にも。雨が降る。忘れたい明日と、終わりのない昨日を連れて。



いわぬ色の花をあげる
あの頃のあなたの髪を素敵にやさしく彩る花を
思い出を連れて逃げたのはわたしこの花だけが嘘のない風になって、きっとあなたの髪を揺らしてくれる
だからどうか受け取って
憎んでもいいの、わらっていて
(いわぬ色=梔子色のこと。花言葉はわたしは幸せ者・幸せを運ぶ・清廉等。梔子色はこんないろ)



指と夢を絡めたあしたは、いつのまにあんなに遠くへ行ってしまったのだろうか
迫り来る極彩色に押し流されないように、しっかりと手を握りあっていたのに
なだらかな虹の終わりに届きそうなつまさきは、随分と血と土で汚れてしまっていたけれど
それでも、それでも
もう一度もう一度、あなたに会える日が来るならば
もう二度ともう二度と、離さないと誓うのに


*リクエストいただきました「敵同士の切ない恋」長文題でした 随分とあれやそれなのばっかりで、切ないのかどうかすら曖昧ですが、お気に召して頂けたらさいわいです つくるの楽しかったです 違う意味で切ない恋もやってみたい今日この頃 素敵なリクエストありがとございました!
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