1. こんにちは、こちらの世界。
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見たこともない程に細く高く伸びる謎の建造物。かと思えば一方、同じぐらいの高さで様々な形の建造物があり、四角い雰囲気の文字らしきもので書かれた看板が立つ敷地には謎の複雑に組合わさった鉄の棒がある。
これを見た明らかに場違いの服を着た男が口にした第一声はこれだ。
「……何ですか、ここ…」
周囲の人を見ればどう考えても自分の服はおかしい。そもそもこんな真緑の帽子を被っている人など一人もいないし、第一男性でこんな裾の長い服を着た者はいない。
とにかく冷静に、と自分を落ち着かせながら物陰に隠れて辺りの様子を窺い今後のことへと思考を巡らせる。
ここの気候はどういうものなんだ、この服だと少し肌寒い気もする。食べ物は数日なら暗殺時代のお陰で生き延びれるが長くはこうしていられない。
大体なぜこんな訳の分からないことになってるんだ。
どういう訳かこの男、ジャーファルには今自分が陥っている理由がさっぱり分からなかった。よく分からないが気付いたらこの変な棒が組合わさった場所に立っていたのだ。
「とりあえずこの服をどうにかしなければろくに歩き回れませんね…」
あまり多くないが行き交う人をよくよく観察すれば今着ているシャツならばあまり違和感がなさそうなことに気付いた。問題は下だが……これは妥協する他なさそうだ。何せ足の古傷をさらす訳にはいかないし、どこかで縛ったにしろ周囲の人と同じようになるかと問われればむしろその逆、余計におかしな人と認識されるのは目に見えている。
あぁ、もっと自分が馬鹿だったらこんな風に考えることもなかったんでしょうね。
ヤケになっているのかそんな考えが頭を過(ヨギ)る。
途方に暮れていると誰かが来る気配がした。慌てて上に飛びのき下を見れば一人の女性が立っている。
ついでに上には先客がおり、グレーのネコが丸くなってこちらを見ていた。大人しくしてそうなので刺激しないよう気をつけつつ改めて下に視線を向ける。
「ん〜どこ行ったのかなー…」
どうやら誰かを捜しているらしく顎に手をあて唸っている。年は見たところ17、8歳か…活発そうな顔立ちでポニーテールがよく似合う。
「…ん?」
「っ!」
そんな彼女が上を見る。驚いた、気配は消していたはずなのにこちらに気付くとは思いもしなかった。ばっちり彼女と目が合ってしまった私は冷や汗をかき固まってしまった。
一国の政務官ともある者がなんて様だ。
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