光と花の少女 | ナノ
第1章 出会い編

01. シンドリア王国にて


第1章 ▽
シンドバッド+八人将登場!
ラナン、早々に魔法を使いまくります。(オリジナルキャラクターあり)

 
南海に面する国、シンドリア王国。周りに比べると小さいながらもそれなりに力を持ち、明るく賑やかに栄えている国だ。

そんな国の人気が少ない海岸では、ここには似つかわない切羽詰まった声が響いていた。

「“かまいたち(アルナージ・アン・アリシファ)”…!!」

声の主が叫ぶと風が かまいたち となり、海に現れた竜(ドラゴン)のような顔の巨大魚へと向かう。しかし巨大魚は口から水を吐き出し、攻撃をやり過ごした。

「っ…。“竜巻(テニー・アリシファ)”…!」

声の主の少女は巨大魚の周りに竜巻を起こす。前後左右を囲み、竜巻は全部で5個だ。
しかし巨大魚はその場で高速回転をし水の壁を作る。それは自身を囲んでおり、言わずとも竜巻を防いでいた。
少女が様子を窺いつつ次はどうするか考えていると、突如少女側の水壁に大きな穴が開き、そこから勢いよく水が噴射して少女に向かっていった。

「ブッ」

まともに受けた少女は水圧に押され、バランスを崩したまま杖を手に海へと落下する。
バシャン、と辺りには一際大きな音が響いた。

つけ込むように巨大魚は特有の速さで少女の元に突っ込む。
少女は水中で突進してくる相手に驚き恐れを抱くものの、何もしなければ鋭い口先で刺されるのは明白だった。
慌てて水中で風を起こして距離をとり、そこから酸素を求めて顔を出す。

「っは。っ…ふぅ…。“風の道(リアッシ・アルタリーク)”!」

息を吸ってすぐに呪文を叫ぶ。それは海に向けてであり、巨大魚にではなかった。
再び水面に出ていた巨大魚は周りに水壁を作りながら寄ってくる。口を大きく開け、今度は至近距離で水を噴出するようだった。

それを見た少女は顔を険しくする。顔が青いのは巨大魚のせいだけではなかった。

「……っ。」

バシャバシャと犬かきのように浮かびながらタイミングを図る。

「フッ!」

気合いの声と共に手にしていた杖を上へ伸ばす。

「グワァ…!!」

下から現れた太い風に貫かれた巨大魚は叫び声を上げて真っ二つに裂けた。辺りには肉片が飛び散り、ドボンと音を立てて海へかえっていく。

それを見つめた後、あと一歩遅かったら巨大魚の攻撃を受けるところだった少女は、そのまま沈みたい気持ちになったのを無理に保って最後の力を振り絞った。

「“空飛ぶ杖(テイラン・キャーサ)”…!」

杖に乗る気力もなく握る右手にだけ集中し、パッと目についた森へ杖を向けると目を閉じる。

加減もできずそのまますごい勢いで彼女は近くの森に突っ込んだ。



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