「わぁ…綺麗…」




満開の桜の下で思わず感嘆の声をあげる。
桜が好きな私にとって、春は本当に心が弾む。
見ていて飽きない薄紅色の世界に感動して、上ばかり向いてしまう。


だから、気づかなかった。


「危ない!!」

「え?うわ!!」



突然、声と共に腕を引かれて意識が上から前へと向く。
気づけばすぐ目の前に電信柱があった。しかももう少しでぶつかる距離で。



「あ、急にごめん…大丈夫?」

「は、はい!」



私を助けてくれたのは、同い年ぐらいの男の子。
彼は慌てて私の腕から手を離す。


「ありがとう…助けてくれて」

「いや、大したことは…えっと、桜を見てたの?」

「うん、私、桜が好きなんだ。上向きすぎるけど」


悪い癖だなぁ、と困ったように笑うと同じような笑みが返ってくる。


「でもその気持ち分かるよ」


思いがけない同意に目を丸くする。


「え?」

「俺も好きなんだ、桜。だから、桜のあるこの道に来たらがぶつかりそうな君が見えたんだ」

「そう…なんだ」


桜が好きと聞いて少し嬉しくなった。


「俺、最近引っ越して来たんだ…よかったら桜好き同士、仲良くしよ?」




そう言って優しく笑った。


「う、うん」




…あれ?…なんだろ?



鼓動が速くなってる気がする。
それに顔が熱い。



こんなに綺麗な薄紅色の下にいたからきっと、私にも色が移ってしまったんだと思うことにした。






桜花に似てゆく頬の色
(だから、同じ色)




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