「あ、いたー」


短い休み時間。


教室のドア付近で俺を呼ぶ声が聞こえた。

顔をあげればそこには幼なじみの少女の姿。



俺は席を立ち、彼女の元へと向かう。


「どうしたんだよ」

「ごめん、世界史の教科書貸してっ!!」


拝むような仕草とともにそう言われた。


「はぁ?なんで、俺」

「だってー、他に頼る人がいないんだよ」



彼女の交友関係は詳しくは知らないけど、確か仲のよい友達は同じクラスだったと言っていた。

他のクラスの友達は選択の都合上世界史の教科書は持っていないのだろう。




俺は小さくため息を吐いた。


「分かったよ。今取ってくる」


一度その場を離れ、机の中から教科書を取り出す。


「ほら」


手渡してやれば、返ってきたのは感謝の言葉と満面の笑み。


「わーありがとーっ!!やっぱり持つべきものは良い友達よね!」

「……――んだけどな」

「へ?何か言った?」


小さく呟いた言葉は聞き取られることはなかったようで。
俺は適当に誤魔化した。


「いーや。ほら、チャイム鳴るぞ」

「あ、うん。じゃあ、後で返しに来るね」


不思議そうな顔をしながらも、俺に促された彼女は自分の教室へと戻っていく。
パタパタと去っていく背中を見ながら俺は再びため息を吐いた。




友達じゃ不満なんだけどな。




なんて、言えそうにもない。





友達じゃなくて、好き
(いい加減気づけよ)




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