(流星/響)※本編13話辺り








ふわりと、まるでスローモーションで見ているかのように君の身体が宙に浮かぶ。
俺の足は地面に縫いつけられたかのように重く、いくら動かそうとしても動かない。


次に目に映ったのは辺りに飛び散る赤い液体。
そこでやっと俺の足は軽くなり駆け寄ることが出来た。


固く閉じられた君の目は俺を映そうとはしない。


触れた頬は恐ろしく冷たかった。







「…っ…!!」



はっとしたように、俺は飛び起きた。


背中にじっとりと嫌な汗をかいている。
心臓が尋常じゃないくらいに脈打っているのが落ち着かなくて、気持ち悪い。




「……また、同じ……」



呟きながら胸元のシャツを握る。
何度目かのこの夢。



一体何度、失えばいいんだろう。
俺は何度同じ失敗を繰り返せばいいんだろう。




いつも吐き気がしそうなほどの恐怖とどうしようもない後悔が一気に押し寄せてきては俺を襲う。




どうしたらよかったのか、分かり切った答えを考えるのももう億劫だった。




ただ、一つだけ。




「……歌夜……」




目が覚めたってどこにもいない。

その事実だけが何度も突き刺さった。




「……今の俺は、どうしたらいいんだろうな」



縋るような問いの答えは返ってこない。


俺は一度大きく息を吐いてから再びベッドに横になった。
夜が明けるにはまだ時間がある。



残酷な夢も、幸福な夢も、いらないから。

意識の底へ深く沈ませて。




そう願いながら俺は再び目を閉じた。





003:悪夢がどうした
     (Hematite/赤鉄鉱)




(夢だけならまだ耐えれた)










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