(泥棒)









「あの子達ってそれぞれ性格があるんだね」

「……は?」


次の目的地まではまだ遠い道中。
穏やかな天候の中、ちょうど見晴らしのいい丘にあったこれまた休むのにちょうどよさそうな樹の下で休憩をしていた時。

唐突過ぎるソラの言葉はレンの思考を一瞬停止させた。


「……どの子達だ?」

「イル達のこと」


話しながらソラの目線は陽の光を浴びる黒、白、灰のねずみ三匹と銀色の鷹一羽へ。
機械であるそれらは太陽光が動力の一つになる為、休憩の時は定期的に外に出してやっている。

充電を兼ねてるのだが、ねずみ…ラル、イル、ソルは丘をちょろちょろと走り回っている。
それを鷹のクーが上から見守ってる状態だ。

充電の意味あるのか、とその光景に微かに呆れつつレンはソラへと視線を戻す。


「あいつらに性格?」

「うん、例えば…ラルは負けず嫌いだし、イルは好奇心旺盛、ソルは少しマイペースかなぁ」


そう言われて改めて三匹に注目してみる。


黒色のねずみ、ラルは走り回っている時に他の2匹に抜かれたりするとムキになったように追い抜いている。

白色のねずみ、イルはたまに近くの花に近づいて眺めたり、飛んでいる蝶についていったりしている。

灰色のねずみ、ソルは他の2匹についていっていたかと思えば急に方向転換してレン達の方に戻ってきたりして周りを気にしていないように見える。


「……」


観察していたレンがその事実に微かに目を丸くしていることに気付かずソラは説明を続ける。


「あと、クーはしっかり者のお兄さんって感じがする」


最後に銀色の鷹、クーを見ると確かにねずみ三匹の行動をよく見ていて何かあるとフォローに回っていた。


「……確かに」


驚きながらレンがぽつりと呟くとソラはでしょ、と得意げに笑う。


「ラルとソルとクーはそれぞれレンの性格に当てはまる気がするなー」

「……それを言ったらイルなんか完全にソラだろ」

「え!?」


呆れながらそう返せば目を丸くされた。


「えー…ペットは飼い主に似るのと同じ感じかな?ペットじゃないけど」

「どうだろうな」


しかし、とレンは改めて三匹と一羽を見る。


「あいつらいつの間にあんなに違いが出てたんだ…?」

「最初からじゃないんだ?」

「初めて手に入れた時はもっとみんな機械的だった」


同じように外に出してもあんなにちょろちょろと動き回ったりしていなかった気がする、とレンは当時を思い返す。

すると、自分たちの話をしていると気付いたのか、走り回っていた三匹と一羽は二人の元まで戻って来た。

ラルとソルはレンの手元、クーは肩へ。
イルはソラの方へと向かった。

手を伸ばして二匹を掬い上げ、レンは改めてそれらを見つめる。
翠の瞳にじっと見られてラルとソルはそれぞれ首をかしげた。


「…開発者じゃないから分かんねぇけど、そういう機能があったのかもな」


学習機能の延長的なものなんだろう。

そう考えながらレンは二匹をそっと撫でる。
そんなレンにイルを手のひらに乗せていたソラはきょとんとした顔を返した。


「え、レンがみんなのことをただの道具じゃなく大事な仲間だと思ってるからそれぞれ性格が生まれたんじゃないの?」


冗談を言ってるわけでもなくごく当たり前のようにそう告げられレンは少しだけ面食らう。

それでも全部が間違いではないその言葉にレンは否定することが出来ず、小さくため息を返したのだった。







025:生誕
        (Selenite/透石膏)




(それは大切にしてきたからこそ)





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