(学生)









「プラネタリウムを見ない?」


帰り道、唐突なテルの一言に三人はきょとんとした表情を返した。


「プラネタリウム?」

「部屋でプラネタリウムが出来るって装置を貰ったんだ。まだ試してないからどんな感じか見てみようかと思って」

「え!プラネタリウムが部屋で見れるの!?見たい!」


途端に目が輝き出すケンにテルとダイは苦笑した。


「俺も気になるな。テルの家でいいの?」

「うん。僕の部屋」


あとは、とテルは黙ったままの残りの一人に目を向けた。
少しだけ先を歩いていたユースケはちらりとテルを見る。


「…早く行かねぇの、テルん家」


簡潔なその言葉は肯定を表していて。
まったくもう、とテルは呆れたように笑みをこぼす。

そうして、四人揃ってテルの家へと向かうのだった。


「おー、これが噂の装置かー!すげー!」

「…無闇に触んなよ、ケン。お前壊しそう」

「部屋暗くした方がいいよな?なんかやる?」

「この部屋遮光カーテンだから端だけ塞げば大丈夫だと思う」


わいわいがやがや。
四人で少しだけ騒ぎながら準備を進めていくこと数分。


「これで…準備出来た、かな?」


閉め切った、蛍光灯の明かりのみの薄暗い部屋の中でポツンと真ん中に置かれたドーム状の装置。
何故か囲むように四人は座ってそれを見下ろす。


「ついにかー!楽しみだな、ユースケ!!」

「……そこは否定しねぇけど、ケンうるさい」

「じゃ、消すよー」


ダイが部屋の電気を消すと同時にテルは装置のスイッチを押した。


一瞬の暗闇後、そこはもう小さな部屋ではなかった。

満天の星。
天井も壁も無くなって、代わりにどこまでも広がっていそうな宇宙が広がっている。

四人はしばらくただ黙ってその光景を見つめた。


「…すごいね」


ようやく、テルが小さくそう声を漏らす。


「…ん、確かに」

「ほんと。ありがと、テル。いいもの見せてくれて」

「どういたしまして……あれ、ケン?いる?大丈夫?」


反応が全くないケンをテルは薄暗闇の中で探す。


「俺、今宇宙の中にいるよ!!すっげー!!」


今なら星に手が届く、とひどくテンションの高いケンの声が響いた。
むしろ実際、今手を伸ばしてるのだろうなと予想するのは三人には容易なことだ。


「…通常運転だった」

「うん、安心した」

「ケンー、危ないから立つなよー?」


呆れた声で三人はそれぞれ、そう声を掛けるがケンは気にしていなかった。


「テルいいなー。部屋が宇宙になって」


声からして心底羨ましそうなケンにテルは小さく微笑む。


「いつでも見に来なよ」


またみんなで宇宙を見よう。


そう話すテルの言葉に三人は笑って返事を返すのだった。






021:暗転夜光
      (Diopside/透輝石)




(部屋に敷き詰められた宇宙)





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