(流星)













「え、日本に来る!?マジで!?」


携帯を見ていた響が突然大きな声を上げるので私はびっくりしたように響を見る。
携帯を眺める響は嬉しそうな様子で、今まで見たことないくらい目がきらきらしてる、ように私には思えた。


「ど、どうしたの?響」


戸惑いつつ声を掛ければ、はっとした表情になって私に顔を向ける。


「…あ!…ごめん、彩音。びっくりさせたな」

「ううん、それは大丈夫だけど…誰か日本に来るの?」


改めて尋ねると響はとても無邪気に笑う。


「そう!海外の俺の好きなバンドが日本公演するって発表があったらしくて」


そう言いながら、響は携帯の画面を私に見せてくれた。
その海外のバンドの名前は私も知ってる世界的に有名なバンドだった。


「あ、このバンドの曲、CMとかで使われてたりするよね。英語はあまり詳しくないんだけど耳に残るメロディでいい曲だなって」

「そうなんだよ!歌詞もちゃんと意味調べるとすっごい良くてさ…!俺、このバンドのギタリストに昔から憧れてて…!」


そう楽しそうに響は話を続ける。
こんないつも以上にテンションの高い響を見るのは初めてかもしれない。
なんだか私も楽しくなってしまう。

しばらくしてふと我に帰ったように、響はぴたりと話すのをやめる。
その顔は微かに赤い。


「ご、ごめん彩音。俺一人だけ話し続けて…」

「全然平気だよ。響がすごく楽しそうだから聞いてて飽きなかったし、私もちゃんと聞いてみたいなって思ってたとこ」


笑ってそう答えれば、響もほっとしたように笑う。


「じゃあ、今度一緒に聞こう。おすすめ教える」

「うん。でも…まずはチケットだね」


私の言葉に響は一気に表情を暗くして携帯の画面を見つめる。



「………倍率、相当高いだろうなぁ」

「わ、私も協力するね…?」

「うん、ありがと…」


世界的に有名なバンドが行う公演に、日本だけでもどれだけの人が行きたがるかなんて深く考えなくても分かることだった。


数ヶ月後。
案の定、先行発売の抽選は当たることもなく。
一般発売に至ってはアクセスすら出来ずにチケットは完売となってしまった。
倍率どんなことになってたんだろう…


「…あの、響…」


落ち込んでるだろうなとどう励まそうか悩みつつ声を掛けた。


「大丈夫。協力ありがとな、彩音」

「ど、どういたしまして…」


少しだけ名残惜しそうに響は携帯の画面を見つめる。


「やっぱり皆好きなんだなぁ…すごい人気だ…」

「…そうだね」

「…俺たちも、そんなバンド目指さなきゃな」


そう言って力なく笑う響に、やっぱりどう励まそうかと私は改めて考え始めた。






018:砕け散る光

      (Diamond/金剛石)




(希望が全て叶うとは限らない)





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