(泥棒)










連れて行って、と言われて折れてしまってから1日後。
決めたのは俺だから今更それを後悔することはない。

が、

今まで1人だったぶん誰かが隣にいるって変な感じがする。


「わぁ…」


一緒に旅することになった少女、ソラは思ってた以上に好奇心の塊みたいだ。
ルフールを出てからずっと辺りをきょろきょろと見渡しては落ち着かない。

会話はほとんどないが、時々こっちを伺うようにちらりと見てくる。
よく分かんないけど。


「あれ、なんだろ…」

「何が?」


ぽつりと呟かれた言葉に返事をするとソラは一瞬だけ驚いたような表情をしたがすぐに興味の原因へと指差した。


「あれ。あの丸い実」


指差された青い実を俺は知っていた。
だから、すぐさま答えを返す。


「ツキノミ。満月の夜にだけ甘くなる実だ」


今は青い実も満月の夜にだけ黄色くなる。
そう答えてやると謎が分かって嬉しいのかソラの表情が明るくなる。


「不思議、そんなのがあるんだね!食べてみたいなぁ」

「間違っても満月の日以外に食べるなよ。軽い毒あるから」

「え!?……どういう仕組みなんだろう…?」


さっきの嬉しそうな表情から一変して考えるように眉間にしわを寄せている。

すぐ表情が変わって分かりやすいな、と思った。
そういえばろくに嘘もつけてなかったことを思い出して、元から素直な奴なんだろうと納得する。


「あ、そうそう!教えてくれてありがとう。レンは詳しいんだね」


また表情が変わった。


「別に…」


真っ直ぐな尊敬の念が込められた眼差しを向けられ、なんだか居た堪れなくなって思わず目を逸らす。


「…あの、さ…」

「どした?」


おずおずと切り出された言葉に首を傾げれば、決心したようにソラは話し出す。


「また、気になるものがあったら聞いてもいい…?」

「……」


…なるほど。

時々こっちを見てきた理由が分かった。


「…俺で分かるやつならな」

「! ありがとう、レン!」


そう言ってソラは満面の笑みを浮かべた。


それからすぐに好奇心を口にし出したソラに俺は呆れながらも悪くないなんて思った。






016:隣には笑顔

      (Lepidolite/リシア雲母)




(楽しそうで何より)





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