(学パロ)



長期休み直前の放課後の教室はそわそわと浮き足立った雰囲気を迎えているはずだった。
しかし、今の空気は重苦しいどんよりとしたなんとも言えない嫌なものだ。
原因となっているのは教室の真ん中で落ち込んでいる紅髮の少女ーソラのようだった。


「…一体どうしたんだ?」


日直の仕事が終わり教室に戻ってきた途端出迎えたそんな雰囲気に戸惑いながら、ダイは恐る恐る口を開く。


「テスト」


そばにいた友人達のうち、レンがあっさりとそう返す。
しかしその言葉はダイをますます混乱させるだけだった。


「テスト?この間終わったのに?」


期末テストが終わったのはつい数日前。
結果も今日で全教科返ってきたばかりだ。


「テストの結果がねぇ…」


レンの言葉を繋げるようにテルが苦笑しながら話す。


「…ソラ、赤点取ってないよな?」

「それが…一定の点数に達してない教科が一つでもある人は夏休み補習があるってことを一足先に知っちゃって。詳しいことはまた明日また話すらしいんだけど」


彩音の説明にダイはようやく納得する。


「あー、なるほど」

「…見事に数学で補習に引っかかったってこと」

「え、ユースケは大丈夫だったの?」

「ケンカ売ってんの?」


少し不機嫌になったユースケを見ながら、ギリギリセーフだって、とテルが笑いながら教えてくれた。



「あー…」



未だ落ち込むソラはまともな言葉を発してない。


「そんなに数学ダメだったんだ?」

「それはもう悲惨すぎるほどに」


レンが呆れながら返答してくれた。


「なによー。サボってたわけじゃないのに。訳が分からない数学が悪いのに。何が数学だよ、滅べ!」

「気持ちは分かるけど、言ってること無茶苦茶だからな」


騒ぐソラをレンは適当に受け流す。


「まー、ソラ、頑張れよ」

「そーだよ、ソラ!」


楽観的な響とケンが呑気に応援する。


「いや、2人も補習でしょ」

「なんでそんな軽いノリなの…」


そんな2人にテルと彩音が苦笑いする。


「俺ら今更補習で落ち込むほどじゃないしなぁ」

「うん!」


その時、顔を伏せていたソラがジト目で響とケンを見た。
そして冷たく言い放つ。


「2人に言われるとか余計落ち込む」

「えー!!」

「さりげなく俺らにも傷負わすのやめてくれない!?」

「まぁ、正論だろ」

「ユースケ…」


再び机に伏せながらソラの愚痴は続く。


「というか、テスト終わった直後に補習って酷くない!?私の精神はボロボロだっていうのにこれ以上さらに傷付けようというの!?」

「そうだな」

「鬼か!鬼なのね!」

「あー…とりあえず帰るか。ほら、行くぞ、ソラ…じゃーな」


面倒になったらしいレンが喚くソラの腕を引っ張りつつ教室から出て行った。


(大変だなぁ…)


その場に残った誰もがそう思った。



013:私を傷つけないで
       (Desertroses/砂漠の薔薇)




(もう何もしたくない!)








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