(流星/響)





真っ暗な闇の中で立ちすくんでいた。


さっきまでは歌が聞こえていたからそれを頼りに歩いていた。
一歩先でさえ何があるか分からない暗闇。
それだけしかなかったから。


でも、突然歌が途切れた。


それはあまりに突然のことで、
恐ろしくなって、
寂しくなって、
どうすればいいか分からなくなって、


そこで立ち止まってしまった。
もう先が、見えなかった。





―馬鹿だなぁ―




どこからか声が聞こえてきた。
聞き覚えがある声。それどころかすごく慣れ親しんでいたような気がする。




でも、それが誰だったか顔を思い浮かべようとしても靄がかかったかのようにどうしても思い出せなかった。




―ほら、こっちだよ―




声は道を示すように囁きかける。
立ち止まっていた足は誘われるように歩き出す。



―大丈夫、あなたは1人じゃないから―
―あなたを待ってる人がいるの―




ようやくその声が一度消えた歌声と同じだと気付いたとき、またどこからか歌が聞こえてきた。
さっきとは違う声。

綺麗な歌に思わず顔をそちらに向ける。
何もなかった暗闇に小さな光が見えた。


きっと、出口。




―だから…大丈夫―

―頑張ってね、…響―




暗闇から抜け出るその瞬間、
相変わらずその人は声だけだったけれど、柔らかくなんだか嬉しそうに微笑んだ気がした。




010:出口はこっち
      (Fluorite/蛍石)




(出口を抜けるとそこには君がいた)








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