忘れ物、なし。寝癖も、OK。
よし。

「いってきます。」

少女、渋谷夏目の1日はこうして始まる。
身嗜みを洗面台の鏡でちらりとチェックしては、和室にいるのだろう祖母に向けて声をかけて家を出る。

ウルフカットは動きやすく、煩わしく無いので彼女は気に入っている。


しばらく歩いて、三角屋根のフレンチカントリー風の可愛らしい建物が見えるとインターホンを押す。2、3分ほどするとゆっくり扉が開き、ふわふわの栗色が覗く。


「まだ眠そうだね、小花。」
「ん、……おはよう夏目〜。」


どこか噛み合わない会話ながらも2人は並んで歩き始める。続く会話は無いが、お互い気まずいとは思わない。むしろこの沈黙が心地よい、とさえ感じているのだ。


最寄りの駅へ着くと2人は定期を取りだし、改札をくぐる。今日もいつも通りの電車だ。いつしか見慣れた顔ぶれとなった人波に押されるように電車へ乗り込むと、あとは到着までの間小花が転ばないよう気にかけるのが夏目の日課である。



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