キーンコーン―

放課後のチャイムが鳴り、氷帝学園3年B組に所属する唯川梨子はふたつの鞄を肩に提げる。片方はスクールバッグ、もう片方は部活用のトートバックだ。中には部活用のジャージと換えのジャージ、タオルと水筒、愛用のメモ帳と三色ボールペンが入っている。ちなみにボールペンは消えるタイプである。


「梨子ー、今日も部活?」


クラスの友人が声をかける。梨子は所謂“フレンドリー”な性格ではないため友人は多くないが、その分今いる友人は彼女にとって理解者であり、掛け替えのない存在だ。


「大変だねえ、マネージャーも。」
「全国区だからさ、仕方ないって。」
「偉いね梨子はー!頑張って!」
「ちょっ……髪ボサボサ!…っもー。」


子供扱いして、なんて考えながら勢いよく撫でられ荒れた髪型を直す。毎朝丁寧に巻いている髪の毛は幸い手櫛でどうにかなりそうだ。

すると、日直だったのだろう、今日の振り返りを日誌に記しては担任に提出し終えた青年が荷物を持ち梨子の元へやってくる。
その髪の毛は綺麗に切り揃えられており、サラサラと重力に従って揺れ動く。手入れが行き届いている証拠だろう。


「さて、梨子、準備出来てる?」
「見れば分かるでしょ。行くよ。」
「……はあ、」


あからさまにため息をつく彼、滝萩之介の隣を歩きながら、梨子は「文句でもあんの?」と視線で訴えかける。それに肩を竦めると(黙っていれば可愛いのに)なんて、本人が聞けば耳まで真っ赤にするのだろう言葉をのみこみ、「なんでもないよ」と冗談ぽく口にする。


彼らの「放課後」はまだ始まったばかりである。


|

[Back]

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -