アセビ * 灰色の好奇心

[犠牲、二人で旅をしよう、純粋な心]


旅をするの?
と、少女は聞いた。何も知らない少女は、灰色のきれいな瞳を輝かせて男を見る。
男は答えない。

少女の父と男は小声で何か難しい話をすると、男が少女の父にずっしりとした巾着を渡した。
契約が成立したのだ。
男は少女の小さな手を引いた。少女の父は一度少女の白髪の髪をなでてやると、にこりと微笑んで、そしてその部屋から出て行った。
少女にはよくわからなかったけれど、一つだけ、これからは父親ではなく、この自分の手を引いている男と一緒に生活するのだと感じた。
男は無言で少女の手を引くと、その部屋の出口へ向かって歩き出した。
少女が男の顔色を覗き込むと、男のフードの陰から見える口元はギュッと結ばれており、その淡々とした動きとは裏腹に何かしらの感情を伺うことができた。

どこに向かうの?
男は答えない。
ただ淡々と、迷いなく町を抜けていく。
このまま行くと、町のはずれ、魔女の住むといわれる森に入ってしまう。
普通の人間であれば言い伝えを聞いて怯み、この森には近づこうとしない。
しかし、この男はこの森の中に用があるようだ。
まったく躊躇いもせず、森に足を踏み入れた。
少女は恐怖と同時に、少しの好奇心も抱いていた。灰色のきれいな瞳が木漏れ日を吸収してキラキラと時折光る。

森のカラスたちもただならぬ気配に、次々と飛び立っていく。
しばらく行くと、古びた一軒の小屋が見えてきた。屋根の煉瓦はところどころはがれ、壁にも蔓が所狭しと張りついている。
少女はさすがに躊躇ったが、男はまるで長年住んだ我が家のように自然にその家の戸を開けたので、恐怖心は一瞬で消えて行った。

その家の中は、まるで外から見た小屋からは想像のつかないほど豪華で、そして広かった。何かの魔法がかかったようだった。
すると突然、大きな強い風がごおっと吹いた。そして、その中から一瞬にして、金髪の若い女性が現れたのだ。
少女がびっくりしていると、その女性は優しく微笑んだ。そして、少女の運命を告げた。
それは、少女が魔女の跡取りとして売られたこと。これからは魔女になるために男と旅をして過ごすこと。
そして、父は少女を犠牲にしたこと。
少女の父は、家族の貧困を救うために、少女を魔女に売ったのだ。
真実を聞かされた少女は、その小さい体を一度ギュッと縮こまらせた。そして、灰色のきれいな瞳を輝かせた。

じゃあ、わたし、魔女になるの?
そのためにここに来たのね!

少女は純粋な好奇心でわくわくしていた。
自分が魔女になる。そんなこと、夢にも思ったことがなかった。
家族のこと、それはとても残念だったけれど、自分がここにいることで家族を救えるならいいと思った。
そして、少女の中の純粋な心が、これから起こることに期待をしていたのだ。

灰色の瞳が、深く輝いていた。

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