アザミ * 正義 [独立、厳格、復警、触れないで] 僕の正義は父だった。 父は厳しい人で、幼い頃から僕は様々な教育を受けさせられた。 父はよく理想像、僕の将来あるべき姿を僕に言い聞かせた。それは、今の父の姿によく似ていたが、僕にとってはそれこそが正義、そうでなければならないものだと思っていた。 僕には母の記憶がない。 幼い頃に殺されたということだけ伝えられているが、どういう経緯で殺されたのか、詳細はまるでわからない。 一度国民に紛れて町へ出たときに聞いてみると、そのおじいさんは苦い顔をして唸っただけだった。 この国の国民は非常に貧しい。その理由を僕は知っている。国王である父が、厳格な父が、「国のため」に厳格な法律を定めているからだ。 国民らは不満を持っているというが、僕にとってはそれが正義であり、疑い用のない正しい政治であった。 あのときまでは。 あの日、僕は多忙な父の代わりに隣国の調査に向かっていた。この国は大きな壁で外交を遮断しているので、他国の様子を知るために、時折調査をしなければならない。 そして、僕が調査から戻ったとき。国中は混乱に陥っていた。聞いたことのない怒号が各地から起こり、まるで見たことのない世界だった。その輪の中心にあるのは、王の住む宮殿だった。 僕は急いで宮殿に向かう。 何がどうなっているのかわからなかった。 人をかき分け、必死の思いで辿り着いた。すると、僕を待ち受けていた混乱のリーダーが、いかにも自分が正義だという風に、僕を押さえつけ、拘束した。 正気であれば僕だって抵抗しただろうが、目の前には、僕の正義が、僕の父が、無惨な姿で転がっていたのだ。 僕は抵抗することなく、地下の牢へと連れて来られた。 そしてそのリーダーは言ったのだ。 悪は絶たれた、と。 △ |