「もううっさいな、あっち行けよブス。」
「絶対いや。誰が行くか!ってかいい加減ブスってやめてよ!」
「ブスはブスじゃん。仕方ないだろ。」
「あのねぇ……!!」

なんで私たち言い合いなんかしてるんだろう。
さっきまで楽しくお菓子食べてたはずなのに。じゃれあってただけなのに。

「ブスなのは認めるよ!でもそういうのって口に出すべきじゃないでしょ!?」
「俺は嘘つかない主義なの。隠し事だってしたくないの。」
「じゃあベッドの下のエロ本はなんなのよ!?」
「え、ちょ、お前なに勝手に見てんの!」

いつだってそうだ。些細なことで言い合って、お互いいろいろ貶しあって。
そのとき君は必ず私をブスって貶す。私がブスなことくらいわかってる。

でもやっぱり君は一応にも私の彼氏なわけで、そして私は一応にも君の彼女なわけで。

私のこと可愛いって少しでも思ってくれたらって、努力してる理由も君なのに。
やっぱりブスって言われると少なからず…いや、かなり傷つく。
君には反対の言葉を言ってもらいたいんだ。なのに。

「あのな、ベッドの下ってのは男の秘密なんだよ。そこは見るべきじゃない!わかる?」
「秘密ってことは隠し事じゃん。隠し事しない主義じゃなかったの?」
「あぁもう…!ほっとけ!もう帰れほら!」
「だからやだっての!ここ、動かないんだからっ…。」

じわりじわりと視界がにじむ。
だって、不安なんだ。君は本当に私を好きなのかって。
こんな悩みかなりベタ。でもベタであればあるほど結構深刻な悩みなのかもしれない。

実際私にとってはかなり深刻で、心が痛くて仕方がなくて、今も現在進行形で心が潰れてしまいそう。
でも素直じゃないからとてもじゃないけどそんなこと言えなくて、その代わりに溜まってた涙が零れて、止まらなくなった。

「ばか…お前なに泣いてんの。」
「ばかじゃないし、このアホっ…。」
「…俺だってアホじゃないっての。」

ったく、なんて声が聞こえたと思ったら、次の瞬間君の手に引き寄せられてぎゅっと体を拘束される。
いやだって抵抗してみても君の力は少しも弱まることを知らなくて、抵抗するのもあほらしくなった私は腕の中にすっぽりおさまってしまった。

「…ブスなんて抱き締めてもなんにも楽しくないでしょうに。」
「少しは黙るって行為をできないの。」
「無理。だって私ブスだしばかだもんね。」

可愛くない台詞。わかってても口をついて次々と出てくるのは私が本当に可愛くないから。
頭上からは小さくため息なんて聞こえてきて、もう本当に早く離してほしい。

ほら、ブスなんてほっといて綺麗な人のとこに行っちゃえば良いんだ。その人きっと素直だし、私なんかより性格も甘え方も数百倍可愛いよ。
君だって酷いことのひとつも言う必要すらなくなって、その逆に甘い言葉を囁いちゃったりできるんだよ。その方が人生楽しいよ。

でもやっぱり私は君から離れたくなくて、これ以上離れないように上着の裾をしわになっちゃいそうなくらいぎゅっと掴む。
そしたらまた君からため息が落ちてきて、呆れられたのかと上を向こうとしたらそれもできないくらいに強く抱き締められた。

「ばーか。」
「うっさい。」
「マジで頭足りないよなお前。」
「そっくりそのままお返しします。」

そのまましばらくの続く間沈黙。こっちからしたら少しだけ気まずい。
だって、普段の私たちに沈黙なんて存在しない。喋ってるかゲームしてるか、喧嘩してるかのどれかだ。

そんな空気に耐えきれなくて、君の腕も少しだけ緩んだしどきどきしながら今度こそ上を向いてみる。
そしたらそこにあったのは、私を真っすぐに見つめる不安げに揺れる君の瞳だった。(どうして…?)

「俺、さ…不安なんだよ多分。」
「なにが…?」
「ブスなんて嘘。なんかお前、綺麗になった。」

いきなりの言葉に、あんぐり口を開けてしまった。
だって、綺麗になったかどうかは別として確かに私は頑張った。でもなにしても君は反応のはの字も見せなかったのに。

「全部知ってるよ。癖毛だからって朝アイロンでのばしてみたり香水つけてみたり、メガネからコンタクトに変えてみたり。」
「そ、それはそっちがメガネはキスのときに邪魔だって言うから…!」
「俺はそのままが良いんだよ!」

ちょっとだけ大きい声を出されて思わず肩が揺れる。
でも君の目は本当に真剣で、なんだか言い返してはいけないような気がして私は口をつぐんだ。

「俺、お前のふわふわな髪いじるの好きだよ。抱きついたときにする匂いも安心できて好きだし、キスするたびに俺がメガネ外すのも好き。」

驚愕の事実とでも言おうか。君から次々と零れてくる私の知らなかった君の気持ち。
そしたらまた涙がぽろぽろと私の頬を伝って、それを君は拭ってくれた。

「綺麗になってくれるのは嬉しい。でもさ、お前気付かない?最近お前の人気上がってんの。」
「へ、はい…?」

いやいや、知らない。そんなの全然知らない!
身の回りの変化なんて学年が一つ上がった程度だし、その他なんて微塵も変わっちゃいないと思う。

「とにかく、嫌なんだよ。誰にも渡したくないから。俺の以外になんてなってほしくないから、だから…。」

今ごろ照れ屋の性が出たのか、顔が絵の具を散らしたように赤くなる。
その姿があまりに可愛らしくて私が小さく笑い声を漏らすと、いきなり距離がまた近づいて、耳元で君の声がした。

「綺麗になんてなんなよ。ずっと俺のだけでいて。」

なんだ、私の心配なんて必要無かったんだ。
こんなにも君は私を愛してくれてる。想ってくれてる。
裾を握っているだけだった両手を離して、君の背中に腕をまわした。

「やだね。綺麗になりたい。」
「なっ…!?」
「当たり前でしょ?女の子だもん!」

がっかりしたような声が君から漏れる。
だって、私だって綺麗になりたい。君が逃げられないくらい可愛い女の子になりたい。
でも、でもね。

「メガネに戻すよ。」
「…え?」
「アイロンもやめるし、香水もやめる。ってか元から香水好きじゃないし、朝もめんどくさかったんだよね。」

私のまんま、綺麗になってみせるよ。
癖毛を活かした髪型とかあるし、メガネだって可愛いのいっぱいあるし。

私のまんま、君を夢中にさせて見せるよ。だから、

「離さないでいてね。」

鞄を探って久しぶりにメガネをかけると、君がふんわりと優しく微笑む。

「やっぱそっちの方が良いや。」
「見慣れてるからでしょ。」
「いや、可愛い。」

私が頬を赤く染めると、君は私のメガネを外した。


キャラメル
(君のキスはそれくらい甘いの。)


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蘭結ちゃんへ!リクエストにぜんっぜんそえてませんが捧げます!
遅れてごめんなさい…しかもめっちゃ長い!なにこれ!
まぁ長い分蘭結ちゃんへの愛ということで!←
では、相互ありがとうございました。

20091010 しろ


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