「敦…!」

「ん?…あー、ごめんごめん」


敦と歩くときはいつも足のながい敦と距離があかないように私はけっこう必死に歩いている。敦もはじめは気をつかって私のペースに合わせてくれるけれど、いかんせんマイペースなものだから気づけば私と彼の間には数歩ぶんの差が生まれてしまっている。会話のとぎれ目が一番あぶない。


「ごめん。ありがと」

「ん。いつも言ってるけど、謝んのオレだし。逆に気つかうからやめて」


これも恒例の会話。
敦の大きな足だと、私を置いてどんどんと歩いていってしまう。彼がぼーっとしている間に。私は彼のはるか後ろを必死で追いかける。なんだかそれは歩幅だけの話じゃないようで、私はときどき、不意に、不安になる。


「敦は、大きいなぁ」

「んー?なに今さら」


その一歩でどこまで行けるんだろう。私の小さな一歩とはまるで違う。急に私の知らない世界に歩いていってしまいそうなくらいに、私と敦の間には大きな隔たりがあるように感じてしまう。


「ソレ」

「ん?」


敦にビシリと顔を指される。ソレ、とは私の顔を言っているようだけれど、話の流れと行動との関連がよくわからない。


「なんか悩んでるときのナマエの顔」

「…え」

「オレはでけーけど、ナマエに触れねぇくらい遠くにいるわけじゃねーんだから」

「…なんで」

「ん?」

「なんで、私の考えてることわかるの?」

「ん。だってオレナマエの彼氏じゃん。あたりまえ」


敦のたったの一言で私たちの歩幅は近づいて、同じ一歩がはじまっていく。


(130212/おおおとこの足跡)


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