「最初は真面目に練習してたよなァ」

「私はずっと真面目にやってたけど」

「サボりよったんは銀時だけじゃ」

「高杉は学校は休んでも放課後には来ていたな」

「なんだよなんだよ俺だけやる気なかったみてェな言い方しちゃってよ」

「あったの?やる気」


みんなの視線を受けた銀時はわざとらしく悲しんでみせた。いやいや、練習するって言ってるのにいつも先に帰ってたじゃないか。何度みんなで引きずって行ったことか。


「一番やる気あったのはやっぱり晋助だったのかなぁ」


私の発言に、今度は私がみんなの視線を集めた。


「え、なに?」

「一番やる気、というか頑張っちょったんはなまえじゃ」

「へ?」

「そうだな。俺もそう思うぞ」

「は?なんで?」

「あれ、もしかしてなまえ気付いてなかったのかよ?」

「なにが?」

「なまえが部活の後とか部活ない日も高杉にギター教えてもらってたの俺ら知ってたんだぜ?」

「………まじか」

「気付かんわけがないき」

「部活のない日にも学校にギターを持ってきていたしな」

「そこで仲良くなって付き合ったんだろ?ん?若いっていいよなァまったく」

「しょうがないでしょ。ギターのこと聞けるのなんて同じような楽器でいろいろ調べてた高杉だけだったんだし」

「内緒にしちょるみたいじゃったきあん頃は言わんかったんじゃ」

「だって、みんなに知られたらみんなも練習するって言い始めそうだったし」

「それのどこが駄目なんだ?」

「みんなの足引っ張りたくなくて練習してたのにみんなまで一緒に練習してたら私はみんなに追いつけないじゃん」

「ったく、もっと自信持てっつーの」


辰馬は元からうまかったし晋助は私たちよりも早く練習を始めていた。銀時は普通に音程もとれてるしヅラはあの調子で自分の弾きたいように弾いて自分の弾き方をすぐに見つけそうだと思った。だから私もなにかしないとって少しだけ焦っていた。




***


高杉ってどうやってベース練習したの?

本買った

本読んだだけで弾けるようになったの?

おう

そっかー。了解


いつものように部屋でギターを弾きながら効率よく上達するにはどうすればいいものかと考えた。手っ取り早く上手くなる方法なんてないとは思うけど今の私は高杉から教わった少しの基本とインターネットで調べた初心者用の練習方法しか知らない。
私も本でも買って基礎から練習しようかと考えていると携帯が着信を知らせた。かけてきたのはさっきまでメールしていた高杉。


「練習、付き合ってやる」

「え?」

「うまくなりてェんだろ?」

「なりたいけど、いいの?」

「おう」


ほんとに高杉が練習に付き合ってくれるなら今よりはマシな状態になるかもしれない。きっと本を買ってもどこから手を付けたらいいのかもわからないんじゃないかと思う。楽器は違うけど頼りになる先生ができた。


「明日の放課後、本屋行くぞ」

「うん。練習って学校で?」

「あァ。とりあえずバンド練入ってなくてお互い予定ねェときは二人でやんぞ」

「ありがと。相当助かるよ」

「俺が教えんだからしっかり上達しろよ」

「うん、がんばる」


そういえば、この前の練習のとき高杉は私がごちゃごちゃと考えていることに気付いてくれていた。それでさっきのメール。高杉なりに心配してくれているのかもしれない。


「あ、みんなには内緒でやりたい」

「わかってらァ。足引っ張らねェようにって考えてんだろ?」

「…うん。みんなをびっくりさせたいしね」

「あァ、任せとけ」


携帯電話越しに高杉の楽しそうな笑い声が聞こえた。




公然の秘密




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