「んー、やっぱ美味しいね」

「あぁ………でもよォ」


そこで押し黙った銀時を不思議に思う私たち三人。


「どうしたんだ?銀時」

「値段変わってねーのに量減ってね?」


神妙な面持ちで何を言い出すかと思えば。


「まぁ食材の値段も上がっちょるからのぉ」

「さすが辰馬。お金のことに詳しいね」

「今時そんなことは中学生でも知っているぞ」

「うるさいヅラ」

「なっ!」

「俺ァそういうもんじゃねーと思うんだ。商品を提供するってのはもっとこうなんつーか」

「わかるよ銀時。気持ちの問題だよね」

「そうなんだよやっぱりオメーわかってるわ」

「アッハッハ、相変わらずじゃのうおんしらも」

「まったくだ。お前ら二人のゴールのない会話はよくわからん」

「うわ、ヅラに言われたくねー」

「うんうん、ヅラにだけは言われたくない」

「ヅラじゃない桂だ!」

「変わっちょらんのはヅラもぜよ」


辰馬の大きな笑い声が私たちのテーブルに響いた。




***


放課後。賑やかな教室。私は今からさっちゃんとカラオケ。


「そうだ、楽器屋行こう」

「行ってらっしゃい」


お前もだよ、っていう目で坂田が見てくる。そんな思い付きなんか知らん。


「言っとくけど私行かないよ」

「いやいや、行くんだよ」

「今からさっちゃんとカラオケ行くんだから」


オイ、こいつ借りるぞ。
なによそうやって放置プレイ?いいじゃない!興奮するじゃないの!


「よし、楽器屋行こう」

「…………えー」


なになにこの二人の間に何があったの。


「なんじゃ、おんしらデートか?」

「辰馬も行くか?楽器屋」

「面白そうじゃ、行くぜよ」


いつもの笑顔で坂本は頷いた。そしてわざとらしく口元に両手を当てて「高杉ー、ヅラー」と呼んだ。


「んだよ」

「なにか用か?」

「みんなで楽器屋行くんだってさ」

「おーいなまえちゃん?なに他人事みたいに言っちゃってんの」

「だって私無理矢理じゃん」

「おい銀時ィ、なになまえ怒らせてんだよ」

「銀時はまっこと女子の扱いがわかっちょらん」

「なんかお前に言われるとむかつくんですけど」

「行くなら早く行こ。高杉と桂も行く?」


二人からの肯定の返事を受け取って五人で学校を出た。




「楽器屋行って今日買うの?」

「俺ァ楽器なんざ買えるほど金持ってきてねーぞ」

「まァ、下見?みたいな?」


下見のためにさっちゃんとのカラオケを中止にされたのか。坂田め。


「なんかお腹減ってきた」

「放課後のファーストフード店に長居するのは女子の得意分野だな」

「ヅラも女子みたいなもんぜよ。混じっちょってもわからん」

「ククク、言えてらァ」

「なんだと貴様ら!」

「ハイハイ騒ぐなー」


道路沿いにパステルカラーのパフェ屋さんを見つけた。あぁ、食べたい。その欲求はすぐに私の口から溢れた。


「パフェ食べたいなぁ」

「俺はパフェの海に溺れたい」

「私もー」

「なんだコイツら気持ちわり」

「だけど私はね、あの容器の底上げどうかと思うよ」

「奇遇だななまえ、俺も訴えようと考えてたとこだ」

「底上げするくらいなら最初からそれなりの容器に入れてほしいね私は」

「何度失望させられたことか」


変なとこで坂田と激しく共感。高杉も桂も気持ち悪そうな顔で見てくるし、坂本にいたっては関心無し。


「やっぱパフェは量だよね」

「あぁ、店側の心意気だな」

「お前ら変なとこで意気投合するな気持ち悪い」

「うっせェヅラ」

「なんだと!それに俺はヅラじゃない桂だ!」

「おめェもうるせーんだよヅラァ」

「高杉まで言うか!」

「アッハッハ、ヅラは黙っちょれー」


このメンバー内のそれぞれの立ち位置がわかった気がする。




on the earth




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