ここ最近、30℃を軽々と越える暑さが続いている。
それで気を利かせた跡部が、プールに連れていってくれることになった。(実際は気を利かせたんじゃなくて、ジローと岳人がねだって跡部が折れただけなんだけど)

とまぁ、そこまでは良かった。
プールの話が出た時点では行く気満々だった。柄にもなくワクワクしているほどに。
だがしかし。俺の前に大きな壁が立ち塞がった。
いくら身なりをそこまで気にしない俺でも悩むような壁が。


「だから日焼け止め塗った方が良いですよって言ったのに…」

「…言うな」


今の会話でわかったかもしれないが、日焼けをしたのだ。
しかもかなり酷い日焼けを。
赤いし痛いし腹と腕の色の差が気持ち悪い。
こんな状態でプールを楽しめるわけがない。
だから跡部の話を蹴って、長太郎の家にある豪華なプールをTシャツ着て泳いでいるのである。


「あー…ウォータースライダーしてぇー…」

「日焼けが良くなったら行きましょうね」

「…となると今年は無理か」

「…うーん…そうなりますかね」


だよなー、と返してため息。
長太郎の家にプールがあるのがせめてもの救いだ。
…部活のことしか頭になかった、日焼けする前の自分を叩きに行きたい。


「…そういえば…」

「どうかしましたか?」

「今さらだけどよ、お前は行かなくて良かったのか?プール」


ふと頭に浮かんだ疑問を口にすれば、キョトンとした顔で首を傾げた長太郎。
それから数回瞬きをして、ニコニコといつもの笑顔を浮かべながら言った。


「宍戸さんがいないのに行っても意味ないじゃないですか」

「…俺いなくても若とか、いるじゃねぇか」

「…宍戸さん…俺と日吉がプールで楽しく遊んでるとこが想像できますか?」


眉を潜めて言われた言葉に、長太郎と若が楽しそうに遊んでる姿を想像しようとした…が、出来なかった。
…いや、本当はちょっと想像したんだけど、なんというか…あり得なすぎてなんとも言えない気持ちになった。


「…なんか悪かったな、長太郎」

「いいんですよ。俺は宍戸さんと居れればそれだけで幸せですし」


にこにこと笑顔を浮かべて、恥ずかしいセリフをさらりと言ってしまう長太郎の脳内はどうなっているのかとたまに思う。
…ちょっと、本当にちょっとだけ、嬉しく思ってたりするわけなんだけれど。


「…長太郎ー」

「なんですか?」

「焼きそば食いてぇー」

「…ムードぶち壊しですね」


甘ったるい空気が広がって、ちょっと恥ずかしくなったから口にした言葉。
長太郎は苦笑しながらも、お昼は焼きそばにしましょうねと返してくれた。





日焼けにご用心
(宍戸さーん。お昼ですよー)
(おー…って、何だこれ)
(え?焼きそばですよ?)
(は?これが?この焦げたそばの塊が?)
(?ちゃんと焼きましたよ?)
(…長太郎、鉄板持ってこい鉄板。そばとソースと野菜もな)


END



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