「向日さん、攻撃の許可をください」


とあるファミレスの一角。
ピリピリとした空気を纏いながら、苛立ちで顔を歪めた日吉がそう言った。

最近機嫌が悪そうだとは何となく思っていたけれど、攻撃許可を求めてくるほどだとは思っていなかった。
だけどまぁ、とりあえず苛立ちの原因(ほぼ9割はわかっているが)を聞いてやろうと思って口を開く。


「その心は?」

「あのわんこ系ホモ…鳳が鬱陶しくなったからです」

「慣れたんじゃなかったのかよ」

「…あのクサレ変態ホモ、毎回毎回聞いてもいないのに『今日の宍戸さん』とかいう日記帳基ストーカー帳を持って来ては、今日は跡部さんが宍戸さんに近づき過ぎだの今日は忍足さんが宍戸さんに触ってたから呪ってやるだの今日は宍戸さんの家に泊まりに行くんだだのと語りやがって…いい加減我慢の限界がきました」


あくまでもぼそぼそと、周りに配慮した上で不満をぶちまけた日吉。
吐き出せたことで少し気が済んだのか、日吉は見慣れた無表情になって、注文したまま手付かずだった抹茶アイスに手をつけ始めた。

そんな様子を横目に、俺の脳内にはニコニコと笑みを浮かべながら宍戸に尻尾を振っている鳳の顔が浮かんでいた。

俺は学年が違うから基本的に部活中くらいしか会わないけど、日吉は違うもんな…。
思わず同情の眼を向けてしまった俺に気づいたのか、日吉の目が同情するなら許可をくれと訴えている…気がする。


「よし、わかった。日吉!攻撃を許可する!」


そうして日吉に攻撃許可を与えた、のだが。







‐‐‐‐‐‐‐‐‐


「鳳、毎回毎回俺に宍戸さんのことを語ってくるのをやめろ(俺の精神衛生のために)」


翌日の部活が始まる直前、部室の中(偶々俺と日吉と鳳の3人しかいなかった)で鳳を捕まえた日吉が真剣な面持ちでそう切り出した。
対して鳳は一瞬きょとんとした後、眉を下げて口を開く。


「せっかく宍戸さんの可愛さを日吉にも教えてあげてるのに…」

「そんなものいらん」

「何言ってるの日吉!宍戸さんの可愛さがわかんないなんて人生の半分…いや、2/3を損してるよ!」


そう言って鳳は、「宍戸さんはこんなところが可愛くて…」と宍戸について台本でもあるのかと思うくらいスラスラと語り出した。
…俺の知ってる宍戸と違う点が多々あったのは気のせいだと思いたい。

鳳の語る宍戸にとてつもない違和感を感じつつ、鳳からの直接攻撃を受けている日吉をこっそりと眺めていると、明らかに死んでる目と目が合う。
多分、助けてくれと言っているのだろう。
だがしかし、俺も鳳からの直接攻撃を受けたくない。
よって、


「先に行ってるぜ!」


キラッと爽やかな笑顔を浮かべて、そそくさと部室を出た。
直後部室から「下剋上だぁぁぁぁぁぁ」という叫びが聞こえたのは、多分、きっと、いや絶対に、気のせいだ。





第二次ホモ戦争
(日吉、お前の死は無駄にはしないぞ)



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