フローリングの上をごろりごろりと転がりながらあーだのうーだのと唸っている仁王に、ちらりと目を遣る。


「ぅあー…」

「…さっきから何を唸っているんだ」

「うー…」


声をかければ仁王はごろりと転がってこちらに顔を向けたが、返事をするでもなくまた唸った。
何がしたいんだコイツは。


「あー……さーんぼー」

「なんだ」

「暇じゃー、構ってー」


唸るのを止めたかと思えば、暇だ暇だと言いながらごろりごろりと転がる仁王。
まるで駄々をこねている子供のようだ。
小さくため息を吐いて、ごろごろしている仁王の腹を踏んづけた。


「ぐぇっ…何すんじゃ」

「構えばいいのだろう?」

「じゃけぇって、なんで腹踏む?」

「親戚の家にいた猫は腹を踏んだら嬉しそうにしていたぞ」

「…たまたまその猫がMだったんじゃろ」


そう言って呆れたような顔でこっちを見上げてくる仁王を見下げながら、床に寝転ぶ人を踏んづけているというのは、少しだけ気分が良いな。なんてちょっと危ないことを考えてしまった。


「…参謀なんかヤラシイコト考えとるじゃろ?」

「なんのことだ?」

「ニヤニヤしとったぜよ」


変態じゃーと言ってケラケラ笑っている仁王ににっこり笑みを浮かべて、腹に乗せている足に少しだけ体重を加えた。


「ぅぐっ!」

「ニヤニヤ、していたか?」

「し、しとらん!しとらんよ!参謀はニヤニヤなんてしとらんかった!」

「そうか。それはよかった」


ぶんぶんと首を振った仁王に少しばかりの優越感を覚えつつ、足に体重を加えるのを止めた。
助かったと言わんばかりに盛大なため息を吐いた仁王は、こちらをじとりと睨みながら鬼畜、と一言呟いた。

もちろん俺がその言葉を聞き逃すはずもなく、薄ら目を開いて仁王を見下げれば、サッと青ざめた。


「ほぅ…?」

「嘘じゃ嘘!嘘じゃから開眼するんやめて!ついでに足退けて!」


またぶんぶんと首を振った仁王にくすりと笑って、腹から足を退けてやった。
あっさり足を退けた俺にきょとんとしつつも、再び踏まれないためにか、ゆっくり体を起こした仁王。
その横に腰を下ろし、転がりすぎてボサボサになっている仁王の髪に触れる。


「ボサボサだぞ」

「んー…まぁ、あんだけ転がればボサボサにもなるじゃろ」

「櫛いるか?」

「いらん。手でやる」


慣れたように手櫛で髪を整えた仁王は1つ大きな欠伸をして、俺の肩に頭を預けた。
仁王の髪が首に当たって少しくすぐったい。


「眠いのか」

「…別にー」

「じゃあさっきの欠伸はなんだ?」

「…プリ」

「ふっ…本当はずっと眠かったのだろう?」


ごろりごろりと転がりながら唸っていたのも、暇だ暇だと駄々をこねたのも、寝ないため。
遊びに来たのに寝るなんて気が引けたのだろう。
そう言ってやれば、うーと唸って腰に巻き付いてきた。
どうやら当たりのようだ。


「気にせず寝ていいぞ」


さらさらな髪を撫でながら言えば、小さくすまんと返ってきた。
気にするな、という俺の返事が仁王に聞こえていたのかどうかは定かではない。





少しばかりの休息
(仁王、起きたなら離れてくれないか)
(…起きてないもーん)
(また腹を踏まれたいのか)
(ごめんなさい)



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まさ誕生日おめでとう!
2010823


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