「あれ?ジャッカル?」
「ん?あぁ、ブン太か」
3時間目、眠たくなる古典の授業を抜け出して向かった先は屋上。文武両道がモットーの立海で授業をサボるのなんて、俺か仁王か赤也くらいだ。
仁王は教室で寝てたし、赤也は昨日サボりがバレて真田に殴られたばっかりだから、屋上には誰もいないと思っていた。…なのに、屋上には先客がいた。サボるなんてしそうにない、先客が。
「珍しいな。ジャッカルが授業サボるなんて」
「たまにはな」
「ふーん」
よいしょ、と先客もといジャッカルの隣に座って、ふわふわと流れていく雲を眺めた。何か喋るわけでもなく、静かな時間が空を泳ぐ雲のようにゆっくりと流れていく。
「…」
「…」
基本的に、沈黙とか耐えられない俺だけど、ジャッカルといるときの沈黙は嫌いじゃない。むしろ、心地良く感じる。
なんて考えていたら、ぽつりぽつりとジャッカルが話始めた。
「…俺さ、お前に会えて良かったって思ってる。ちょっとワガママだしワガママだけどよ」
「おいコラ」
「ははっ、悪い悪い。…でもまぁ、お前と居れて楽しかった。ありがとな」
ジャッカルの顔は空を向いたままだったけれど、優しい横顔に ちょっとだけ泣きそうになった。…本当にちょっとだけ、な。
「…なぁ、ジャッカル。初めて試合に勝った日のこと覚えてるか?」
「?あぁ」
「あの日さ、俺誓ったんだ。コイツと全国No.1のダブルスになってやるって」
「ブン太…」
「…俺も、お前と会えて良かった。ありがとな」
ジャッカルが嬉しそうに笑ってるのが視界の端に映ったけれど、気恥ずかしくて気づかないフリをしておいた。
「…なーんか、甘い雰囲気っすねぇー…」
「俺らは邪魔者かのぅ」
「…げっ」
良い感じの雰囲気が流れていたのに、突如聞こえてきた嫌な声。声のした方を見れば、ニヤニヤしているワカメと白髪。
どこから聞いてやがった。
「そんなあからさまに嫌そうな顔しないで下さいよー」
「わかってんなら海へ帰れ!」
「俺をワカメと言いたいんすかアンタは」
「落ちつきんしゃい赤也。ブンちゃんは照れとるんじゃよ」
「星へ帰れ白髪!」
「白髪じゃなか。銀髪じゃ」
ニヤニヤと笑ったまま絡んでくるワカメと白髪。うぜぇ!ていうか助けろよジャッカル!
「ジャッカル!お前何ぼーっとしてんだよぃ!助けろ!」
「助けろって言われてもな…」
「だぁぁ!絡んでくるな白髪とワカメ!」
「白髪じゃなか」
「ワカメじゃないっす」
ギャーギャー騒ぐ俺と赤也と仁王。そんな俺たちを苦笑気味で見ているジャッカル。
あぁもう!笑ってないで助けやがれ!
青空の下の友情
(ジャッカル!笑ってないで助けろぃ!)
(ブンちゃんはジャッカル大好きじゃのぅ)
(仕方ないっすよ仁王先輩)
(ニヤニヤしてんじゃねぇ!殴るぞ!…ジャッカルが!)
(俺かよ!)