いとこ以上、
それなら、両思いだろ?
◆蝉時雨

すぐそこの商店で買ったソーダのアイスを齧りながら、縁に仰向けで寝転がる。
蝉の合唱が、物凄い音量で頭の中に響いている。
そりゃ、木は多いけど、それにしてもうるさすぎだ。

木がこんもりと生い茂っていて、一日中日陰になってる境内に風が通り抜けると結構涼しい。
涼しいけど、うるさくて、なんか暑いような気がする。

「……──……」

「ん? なに?」

「っわ」

……そんなに、びっくりしなくても……。

真っ赤な顔をしてバッと体を引いた勇気に、オレのほうがびっくりした。

勇気の声が聞こえたから。
でも、隣に腰掛けて上を向いてる勇気は、オレに背を向けていて、何て言ったのか蝉の声でよく聞こえなくて。
だから、起き上がって顔を寄せただけ、なんだけど。

「……えっと……蝉、すごいねって」

「あ、うん。だな。オレもそう思ってた」

そういうと、固まった勇気の顔がほわりと微笑む。

あ、笑った。
ふっと、胸がくすぐったくなる。

「蝉と、トンボしかいねえよなあ」

「うん」

「ホントに、たまにいるんだぜ?」
「うん、うん」

「こんくらいの、クワガタとか、カブトとか」

「うん」

くすくすと笑い出した勇気に、唇を尖らして言い募れば、さらに笑いを深くする。
ちぇっとわざと拗ねて見せると、笑いながらも、ごめんごめんと勇気が謝った。
謝らなくていいのに。
笑わせたかっただけなんだから。


空っぽの虫かご。
デパートで売ってるのしか見たことがない、という勇気に驚いて、でっかいのを捕まえてやろうと思ったんだけど。

意気込み虚しく、お目当ての昆虫が見当たらない。
こういう肝心な時に出てこないとか、ムカつくわ。

「じいちゃんに頼んで夜、裏山に行くか?」

「夜?」

「うん」

カブト採るなら夜だろ、って言ったら、そうなんだ? って勇気が首を傾げた。
夜……って普通だよな?
オレも首を傾げると、勇気の頬が少し赤くなった。

「あんまり、そういうの、分かんなくて」

「うん」

そんなことで恥ずかしがらなくていいのに。
何か可愛いよな、って思った。



 ◇  ◇



正義の顔がずっと近い。
蝉の声が大きくて、お互いの声が聞こえないから、なんだけど。

近くて、なんとなく恥ずかしいよ。

「いく?」

「ん! 行く、行きたい」

にかっと笑う正義の笑顔が、オレの視界いっぱいに映ってじんわり嬉しくなった。


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -