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みんなのうたうたい

鞠と殿様

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#童謡からの自分的小説
より転載。加筆。

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てんてんてんまり
てんてまり

てんてんてまりの手を振り切って走り出した俺は、幾重もの制止を振り切って、愛しい人の胸へ飛び込んだ。

迎え入れられた暖かい居場所に、思い切り顔をこすり付ける。
すんすんと鼻を鳴らせて久しぶりの匂いを堪能すると、ぎゅっと体が切なくなってきた。

俺には良く分からないけど、上品なお香の香り。
それと、貴方の匂いが混じって、堪んない。


「こら。まり、犬みたい」

「うん。犬でいい」


頭上の笑い声に結構まじめに答えたつもりなんだけど、更に笑われてしまった。


「なあ、飼って? 連れてってよ?」


見上げれば一瞬、その穏やかな笑顔に影が差す。

そんな顔しないで。
貴方を困らせたい訳じゃない。

立場を弁えろと、俺の周りからも貴方の周りからも、何度も言われた。
俺、馬鹿だけどさ、そんなに言われなくたって分かってるよ?
分かってるけどさ、耐えられないんだ。


だって、言ったじゃない。
お前に見せたいって、貴方言ってくれたじゃない。

いつかの寝物語。
貴方の故郷の美しい景色。

お前と一緒に見たいなって言ってくれたあの言葉は、きっと嘘じゃなかった。


連れてって?
どんな形でもいいから。


貴方の突然の帰郷にどんな意味があるのかを、分かってないわけじゃない。

周りに言い聞かされる前から、分かってる。
馬鹿でも、分かる。




だからさ、どんな形でもいいんだ。

なあ?
飼ってよ?


遠い空の下、貴方の傍らに、いつまでも。


それが俺の望み。

目を閉じれば浮かぶのは、貴方の笑顔と鮮やかな景色。


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