誕生日は

04

「って感じのお薬が欲しいです」

「ええとね、徹君」

俺は、目の前に座る年下の恋人の可愛らしい顔に頭を抱えた。

「徹君は、欲求不満なのかな?」

「ううん、違うけど?」

「そうか。あのな、まず、そんなお薬はありません」

「えええええええ!!! 嘘だ!! この漫画に描いてあるよ!!」

脇から肌色分の多いおねえちゃんが描かれた漫画を取り出す。
徹君、そんなもの読んでるのかい?
ちょっとびっくりしたよ。

「それはフィクションです。」

「えー」

納得できないという風に、口を尖らしてみせる。
さくらんぼみたいな唇が可愛い。

「それから、電車の中でそういうことをすると捕まります」

「!! それは考えてなかった!!」

うんうん。
そうだろうね。

「あと、もう一つ、そんな状況になったら、俺泣いちゃうよ?」

「!!!!」

年下の恋人が弾かれた様に俺を見上げる。
こんな可愛い子だから、いつも不安なんだよ、俺は。

「ごめんなさい!!」

顔を赤く染めて、素直に謝る恋人の額にキスを落とす。

「いいよ、他に、欲しい物はないの?」

誕生日のプレゼント。
できたら欲しい物を贈りたくて、聞いた答えが予想の斜め上だった可愛い恋人に、もう一度尋ねる。

「じゃあね〜」

にっこりと笑う恋人の黒目がちな目が俺を見つめる。

「今夜はオールで、各務さんを下さい」

「!」

ぺろりと口の端を舐める舌が毒々しいほど赤い。

「いいでしょ? 誕生日だもん。いっぱいいっぱい、シテ?」

小首を傾げると、真っ黒な髪の毛がさらりと額を流れた。









ああ、俺、明日は会社に行けないかも知れない。



エッチ大好きな小悪魔に魅入られた俺は、きっと幸せものだね。


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