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痛い



社会人×チンピラ
事後の朝
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痛い。
頭が痛い。


目が覚めた瞬間から気分は最悪。
ぐらぐらと気持ち悪いし、自分の呼気が酒臭い。
髪の毛や肌にたばこや食べ物の匂いが染み付いていてべとつく。

二日酔い。
それもかなりの重症。


でも、それだけじゃない。
すぐ隣の見知らぬあどけない寝顔が、最たる頭痛の種だ。

──誰だ、コレ。

脱色で痛んだ髪の毛はぐちゃぐちゃの鳥の巣。
細い眉と、ごてごてと耳を飾るシルバー。
そばかすとニキビ跡が浮く寝顔は幼い。
首から肩へのラインは細く、キメの細かい白い肌には赤い斑点がいくつもついている。

俺は裸。
多分、こいつも裸。


……頭が痛い。


ここは造りからしてラブホテルだろう。
男同士でよく入れたものだ。

ぐるりと見回すと床に散乱する二人分の着衣が目に入った。
出入り口からベッドへ向かって、転々と脱ぎ散らかされているのが生々しい。

驚くほど派手な柄のシャツに、ランニング。
じゃらじゃらとチェーンが付いた年季モノのダメージジーンズ。
無意味なスタッズが散りばめられたベルト。
今なお寝息を立てる少年が、まともな人種でないことは明らかだ。


酔っていたとは言え、己の審美眼が信じられない。
なにも、こんな少年を選ばなくてもいいだろうに。


「……ん?」

まぶたが波打って、少年が薄く目を開けた。

「──おはよう」

じっと見つめられて、思わず口を開く。
途端に少年の顔に無邪気な笑顔が浮かんだ。

「ハヨ。良かった。いなくなってんじゃねえかって思ってた」

「……あと少し遅かったら、そうなってただろうな」

ベッドから降りると、自分の服を拾い集めて身支度を始める。
こんな場所に長居は無用だ。

財布から一万円札を取り出すと、全裸でベッドの上に胡坐をかいた少年の前に差し出した。

「これでここの払いは足りるだろう?」

「足りねえよ」

ぴくりと眉が上がる。

「あはは! すっげえ、カッコイイ、その顔。おにーさん、酔ってたケド、約束した事は大人なんだから責任取れよ?」

「……」

記憶を辿る──気はない。
どうせろくでもないこと、思い出さないほうがいい。

「知らないな。お前の記憶ちがい『オレ初めてなんだけど』

『嘘付け』

『ホント。恋人にしてくれるならイイよ』

『はっ! して、やる、よっ!』

『あ゙あああああああっ!!! ス、ごっ……!』

ケータイから流れる音声に、顔から血の気が引く。

おいおい。
俺。
何やらかしてくれてんだ?

「ヨロシクね、だーりん」

俺の免許証をぺらぺらと弄びながら、にっこり笑った少年の前歯が一本欠けていた。


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少年に感化されて次第に惚れ込んで行くとか、そんな感じでしょうか。
フリーダムな少年が頑なな大人を変えていくありがちなラブストーリー。

アニキ分にヤキモチ焼いてしまって、少年大喜びとか。
怪我した少年を心配して本気で怒るとか。
少年の元恋人にフルボッコにされるとか。
浮気が見つかって、ボロボロと泣く少年に激しく動揺するとか。

意外と健気な少年がいいと思います。


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