十和子と典子













十和子と典子




 十和子は何かにつけて私の一番。
少し大袈裟かもしれないけれど、それほどまでにとても大きな存在。
十和子も、そう思っていてくれているのではないかと何となくだけれど感じていた。
隣にいて当然で、助け合い笑い合い泣き合いとごくごく普通の唯一無二の大好きで大切な親友。
 しかし、これは世間にとっての“ごく普通”であり、私達にとっての普通は少し違う、と小学生高学年の頃に気が付いた。

 最初は、幼稚園の頃二人で見た将来の夢から始まる。
七夕の準備の時、幼稚園に笹がきた。勿論、短冊にお願い事を書きましょうとなり私たちは将来の夢を書いていた。当時よくあるような“お嫁さんになりたい”と願いを込めて短冊を書く。今思えば、ただただドレスというものに憧れていただけのような気がするから深い意味などない。
 そこへ、その話を聞いていた先生が「二人とも、お嫁さんになれるといいね」と話しかけてくれたので、結婚式とは何をするのか尋ねた。なんだかんだでやはり誓いのキスの部分がロマンティックに語られる。省略してしまえば、「好きな人とちゅうをする事が幸せ」との結論に至り私たちは帰り際にこっそりと唇を重ねた。お互いにどことなく恥ずかしさを感じ、はにかみながら照れ隠しをしたのをとても覚えている。

 それから特に何かがあるわけでもなく小学生に上がり、こんなことなど忘れて日々を過ごしていた。そんな中、二人してハマっていたアニメがあった。女の子が活躍するストーリー。最終回では憧れの男の子とハッピーエンドとなり、幸せそうなキスシーンでエンディングを迎える、というもの。ごっこ遊びでもそのアニメの真似をして遊んでいた私たちはこの最終回の真似もしようとしていた。私が男の子役で十和子が主人公だった女の子。曖昧な台詞を言い合いながら笑っていた。さすがにキスシーンの再現まではしないと思い男の子役をやめようとした時である。
 十和子は、「ちゅうはしないの?」と小首を傾けた。私はと言えば、いつの間にかそれば男女でするものだと思い込むようになっていたので少しためらった。けれど結局「しないの?」の一言でわかったと承諾してしまったのは言うまでもない。
やがて、それが遊びの一種であるかのように続き小学生高学年に上がる。

 高学年では男女の仕組みを少し学ぶようになり、やはりキスは女の子同士でするものではないんだと自覚した。
友達ではこんなことしない、と感じ取るには充分で、ぼんやりとやめなければいけない事なのかもという思いが過る。
 けれども私たちはやめなかった。やめられなかった。それと同時に好きであることに変わりはないのだから続けてもなんの問題もないだろうとごっこ遊びの延長の様な形で捉えてしまった。違いに気付きながらも他人事のように流す或いは受け入れたくないと幼心に意地を張ったのかも知れない。

 中学に上がると思春期特有の性に対する興味や保健体育の授業などからそういったものに対しても今までより深く知る。どこにも女の子同士での行為がないのは知っていた。いい加減お遊びのキスもやめなければと機会を伺うようになった。
 けれど十和子は言う。いつだったかのように小首を傾けながら、「女の子同士でしちゃダメだって書いてないよ」と。私は当然驚いた。回数こそないけれど未だにキスは続いている。それが良くないとは知りながらも切り出せない私と違い、十和子はその先を求めたのだから。
 それがとても甘美な誘いに導かれるように目を瞑った。

 やがて今までとは違い、苦しくも甘く、たくさんしたりされたりとお互いを探るように求め合うキスをした。雰囲気に流され十和子の服へ手を入れ、そっと素肌に触れればびくん、と小さく肩が揺れる。
 愛しい子。幼い頃からずっと変わらない一番大切な子。けれど、これが恋なのか友情なのかはっきりとはわからないまま。恋だ愛だのを通り越し、当然のように感じている。それは間違いではないのだろうと確信もあったから。
「ねえ十和子、本当にするの?」
「うん、覚悟くらいしてよ。とびきりかわいいかわいいするの」
え?と少し疑問を感じ、十和子の名前を紡ぐ前にスカートのボタンに手をかけられる。もしかして、いやもしかしなくても…。
「典子、私が上ってやつよ」
ああ、と溜め息が出る。考えている事なんてお見通しとでも言うように。
昔やっていたごっこ遊びを思い出すも私が男の子役ばかりだからまさかまさか。本当に?と十和子を見る。いつの間にか逆転していた。十和子が何も言わなかっただけで実は、最初から…。十和子があまりにも綺麗な笑みを浮かべるものだから、思わずどきりとしてしまう。幸福な気持ちを抱えたままゆっくりと十和子の背中へ腕を回した。









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