03
 

あれから少し進んだ所で、ななしとエミリアを出迎えたのは多くの原生生物だった

まだ気付かれてはいないようだが、これ以上近づけば原生生物は二人に気づいて容赦なく攻撃してくるだろう

しかし他に道はなく、ななしが武器を構えて進もうとした時、エミリアが言い難そうに口を開いた


「……あの、えっと、えっとね。直前でこんなこと言うのはなんだけど……。」

「どうしたの?エミリア。」

「あたし、武器は持ってても実は戦闘経験なんてほとんどないの。……だから、頑張って!あたしは応援してあげるから!」

「応援って……。」


エミリアの言葉にななしは少し考える


「……エミリアも少しは戦って戦いに慣れた方が良いと思うよ。」

「ええー……。」

「さっきは守るって言ったけど…もしもこの先であまりにも強いやつが沢山来たりしたら守り切れない可能性もあるから……ね?」


それを聞いて不安そうになるエミリアに慌ててななしは言葉を続ける


「まぁそんな強いやつの気配はないけど、備えあればー…って言うじゃない?」

「そう……だけど……。あたし、戦闘経験なんて無いのに……上手くできるかな?」

「敵の数が少ない時に近距離で攻撃して慣れていこっか。多い時は遠距離攻撃で援護をお願い。」

「うー……わかった……。」

「よーし、じゃあいきますか!」


気合を入れて敵のいる方へ走っていくななしとその後を追うエミリア

そして先程ななしが言ったように原生生物の数が多い所ではエミリアの遠距離攻撃で怯んだ敵をななしが止めを刺す

少ない所ではエミリアが近距離攻撃で敵を倒すのをななしがサポートに回る

その調子で二人はどんどん先に進んでいった


「……すごい。さすが傭兵って感じ。」

「そうかな?エミリアも慣れてないって割には良い動きしてると思うよ。」

「えへへ……。」


褒められたことによりエミリアは頬を緩めて笑う


「でも……なんか、ちょっとホッとしたよ。あんたがいれば、安全っぽいしさ。」

「このくらいのエネミーならね。この倍はいても平気だよ!」

「うえ、それはちょっと……。」

「冗談冗談。……でもなんでエミリアはこんなところに?」


今の数でもいっぱいいっぱいなエミリアは今の倍もいる原生生物を想像してげんなりとする

それにななしが笑ってふと抱いた疑問をぶつけると、エミリアは溜まりに溜まった愚痴を吐き出した


「あたしは軍事会社に登録されてるだけで、戦う気とかこれっぽっちもなかったのに……。あのおっさん、あたしが働かないからって、ムリヤリ連れ出してこんな危険なレリクスにほっぽって……。こんなかよわい女の子を、一人にするなんてひどいと思わない?」

「う、うん。それはちょっとひどいね……。」


ななしはエミリアのマシンガントークに驚きながらも、彼女の言葉に同意する


「でしょ?やっぱりそうだよね!あたしも仕事をえり好みしてなんにもやってなかったけど……いきなりこれはひどいもんね!……あんたがいれば無事に帰れるような気もするし、おっさんにはあとで文句いいまくってやる。SEEDはもう存在しないからレリクスは安全だ、とか言い張ってあたしのいうこと信じてくれないしさ……。」


中々マシンガントークが終わらないエミリアにななしは口を挟めない為、相槌をうつしかなかった

おっさんというのは先程彼女と一緒にいた背の高いビーストの男性のことだろうなと推測する

そしてさっきはエミリアの言葉に同意したが、自業自得だという気もしてきた


「そりゃ、今まで発見されていたレリクスはSEED襲来があったときばかりに昨日を覚醒させていたよ?でも、全部が全部そうだったかっていうとそういうわけじゃなかったんだよね。一説によると、SEEDの散布する素粒子に反応して起動してるみたい。だけど、同時に磁場の乱れも観測されるからどうもそれだけじゃないと思うのよね。そもそもSEEDは3年前に一掃されたはずなのに、こうしてレリクスは起動してるわけでしょ。レリクス自体が何らかのプログラム管理である以上はトリガーとなるものも、それに準じた……。」


最初は愚痴だったものがレリクスについての小難しい話になってきて、ななしは目を点にする

しばらく話を続けていたエミリアはそんなななしに気づいたのか、話を中断させて視線をさ迷わせる


「……あ。え……ええっとー……」

「なんていうか……詳しい、ね?」

「あ、いや……。こ、このくらい常識でしょ?」

「そ、そうなの……?」

「常識!常識だって!傭兵だったら誰だってこれぐらい知ってて当然なの!」


その言葉にななしは軽くショックを受ける

エミリアが先程言った言葉を半分も理解できなかったななしは帰ったら勉強しようと密かに考えた


「いい?今の説明は忘れて。どうせあたしが何言ったって誰も信じてくれないんだし!」


エミリアは何故そんなことを言うのだろうかとななしは再び目を点にした

今までのエミリアはとても嘘を言っていたように見えない


「私は……信じるよ?」

「え……?信じて……くれるの?」

「うん、まぁ……。」

「……って、こんなこと話してる場合じゃない!もう、いいから先に進もう!」


この雰囲気を変えるためかエミリアはそう言って歩き出し、ななしもすぐに彼女の後を追った




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