他人の秤なんて
 

「…、…」


…また、だ

ここの所名無しはよくため息を吐く

小さくて聞こえ難いけど俺にはしっかり聞こえている

表情も何時もよりも元気がないし、何か悩み事があるのは明らかだ


「名無し、どうかした?」

「…ん?ううん、なんでもないよ」

「嘘だ。最近ずっとじゃないか」


そう言うと名無しは表情を曇らせた

そんな表情をして欲しい訳じゃないんだけどな…

俺はただ名無しには笑顔でいて欲しいだけなんだ


「お互いに隠し事はしないって約束しただろ?」

「そう、だけど…」

「どんなに些細な事でも、どんなに深刻な事でも、何でも受け止めてやるから…だから」


名無しの目を見つめて話してくれるのを待つ

しばらく名無しは口を閉じていたがようやく話す気になったらしく、おずおずと話し出した


「私たちが釣り合わないって、偶然耳にしちゃって…。それから考えれば考える程…優介はデュエルも強いし、頭も良いし、顔立ちも整ってるし…それに比べて私はそうでもないから…」

「…ねぇ、ここ数日悩んでたのってそれ?」

「う…うん」


何でも受け止めてやるとは言ったけどそんな事で悩んでいたなんて…

それにしても誰が言ったんだろう…許せないな


「そんなの…デュエルや勉強なら俺が教えてあげるし、性格も顔も何もかも全部含めて…俺は名無しの事が好きだ。それに俺たちが付き合ってるのはお互いが好きだからで、他人がなんと言おうと関係無いじゃないか。周りの事なんて考えなくて良い、名無しは俺の事だけ考えていれば良いんだよ」

「優介、…!」


名無しが軽く目を見開いて頬を染めながら俺を見るものだから、なんだかこっちまで恥ずかしくなってきたじゃないか…!

赤くなっていく顔を見られたくなくて名無しを抱きしめると答えるかのように俺の背中に腕を回してきたけれど…名無しの体は小刻みに震えてた


「ちょっと、名無し…笑わないでよ」

「ふふっ…、ごめんね?あと…ありがとう」

「あぁ、また悩みごとがあればすぐに言ってね?」

「…うん!」





(ところでさ、俺たちが釣り合ってないって言った奴って誰?)

(え?いや…声だけだったから誰かはわからないよ。でも、なんで?)

(名無しを悩ませた奴をちょっと懲らしめようと…)

(い、そんな事しなくて良いよ…!)




 

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