Run away!
 

このお話はトウヤとトウコが双子で、ヒロインは二人の姉という設定となっております。





ここ、バトルサブウェイの事務室では先程からカタカタという物音がなっていた

それはサブウェイマスターであるノボリが貧乏揺すりをしている音だった


「ノボリ、さっきから貧乏揺すりしてるけど、どうしたの?」

「いえ…別に、何もございません」

「何か悩みとか?良かったら聞くよ?」

「大丈夫です」


その答えを聞いて不服そうな顔をするクダリ

クダリはどうしたものかとしばらく考えた後、何かわかったのかポンッと手を打った


「ねね、もしかしてさ…恋の悩み!?」

「んなっ…!?」


慌てふためくノボリにやっぱりと笑うクダリ


「ある女の子が挑戦してきた時のノボリって、いつも以上にバトル張り切ってない?もしかしてその子の事?」

「それはきっとクダリの気のせいでございます!」

「そうかな?でもさ、そんなに慌てて…怪しいよ?」

「も、もう放っといて下さいまし…!」


と、その時マルチトレインに挑戦者が来たという知らせが入った

普段ならすぐに向かうノボリだが、何やら時間を気にしておりクダリは不思議そうにする


「ノボリ、行くよ?」

「…ええ。…クダリ、このバトルは早めに終わらせますよ」

「え?うん、わかった」








挑戦してきたのはトウヤとトウコで、中々の接戦だったが勝者はノボリとクダリだった

ノボリとクダリがいつもの台詞を言って、4人は駅に到着するまで座席に座る

普段ならポケモンの事についてなどの話をするのに、今日は腕時計を見つめて何も言葉を発しないノボリにトウヤとトウコは不思議そうな顔をして小声で話し合う


「ねぇ、トウヤ…。ノボリさんどうしたんだろう」

「さぁ…。でも何か心なしか焦ってる?」

「…あ!あの顔は恋人との待ち合わせに間に合うかわからなくて焦ってる顔じゃない?」

「え、トウコそんなことわかるの?」

「う…わ、わからないけど…きっとそうよ!」


そう話している間にも列車は駅に着いたようで少し揺れた後に停止した

その瞬間ノボリは立ち上がってドアが開くと同時に言葉を発する


「申し訳有りませんが…わたくしはこれにて失礼しますっ」


そして駆け出すノボリにクダリはトウヤとトウコの手を引いて立ち上がらせてノボリと同様に駆け出した


「2人とも、ノボリの後を追うよ!訳は走りながら話すから!」

「あ、あの!訳って一体…?」

「多分ノボリはよくバトルサブウェイに来る女の子の事が好きなんだと思う。そしてその子と待ち合わせしてるからあんなに焦ってるんだよ…!」

「やっぱり…!私もそう思ってたのよ!」

「そうだったんだ…!」


自分の予想が当たっていて瞳を輝かせるトウコに納得するトウヤ


「でもなんでノボリさんの後を追うの?」

「ノボリ、今まで恋とかしたことないから不安でさ…」

「わかった、私達でノボリさんの恋を応援しようって事ね?」

「そういう事!あ、そこの人!その鉛筆とスケッチブック、お金は払うからぼく達にください!」

「え!?まぁ…まだ何も書いてないから良いですけど…」


クダリは丁度道にいた芸術家から鉛筆とスケッチブックを買った

そして少し遠くなったノボリの背中を3人は再び追いかける








「はぁ…(良かった…間に合いました…)」


ノボリはレストランの前で立ち止まり、時間を確認し安心してため息を吐いた

服を整えていると植木の陰に見慣れた影を見つけた気がして注意深くそこを見る

すると見慣れた3人…つまりクダリとトウヤとトウコがそこから姿を現した

何やら紙に文字が書かれているようでノボリは文字を読んだ


[ぼく達、ノボリの恋を応援するよ!]

「……(あの3人は…。まさか後をつけてくるとは思っていませんでした)」


その文字を読んだノボリは頭を抱えた


[ノボリさん、そんな顔してたら駄目よ!]

「……(悪意はないのでしょうけど…。しかし、ありがた迷惑というかなんというか)」


どうしたものかと考えるノボリに一人の女性が近づく


「ノボリさん、お待たせしました!」

「名無し様…!いえ、わたくしも先程着いたばかりでございます」

「良かった…。ノボリさんは仕事、終わったばかりですか?」

「はい。しかし今日の名無し様はいつも以上に可愛らしいというか…」

「え…?」

「あ、いえ…!気にしないでくださいまし…」

「そうですか?…今日はノボリさんとお食事できる事がすごく嬉しくて…ついおめかししてきちゃったんです」

「…っ!(これは…脈ありととって良いのでしょうか…)」








次々とスケッチブックに文字を書くトウヤとトウコ

クダリはノボリの様子を伺っていると一人の女性がノボリに近づいているのに気がついた


「あ、多分あの子だよ」

「え?どれどれ…?」


2人は文字を書くのをやめて植木から顔をのぞかせた

その途端2人はフリーズした


「ここじゃ声が聞こえないなぁ…でも何か良い雰囲気だよね…って2人とも?どうしたの?」

「ねぇ、トウヤ…。もしかしなくてもあの女の人って…」

「お姉さん…だね」

「え!?トウヤ君とトウコちゃんのお姉さん!?」

「こうしちゃいられないわ!ノボリさんにお姉さんがとられちゃう!」

「うん、行こう!」

「ちょ、ちょっと待って…!」


ノボリと名無しの元に駆け出したトウヤとトウコにクダリは少し遅れながらも後を追いかける








「それでは行きましょうか」

「はい!」

「「ちょっと待ったあぁーっ!!」」

「「!?」」


レストランに入ろうとするノボリと名無しの前にトウヤとトウコが現れる


「いくらノボリさんであろうとも!」

「私達のお姉さんは渡せないっ!」

「お姉さ…?名無し様はお二人の姉だったのですか!?」

「そうみたい…」


少し遅れてやってきたクダリがノボリの問いに答えた

そしてトウヤとトウコはビシッとノボリを指差す


「と、いう訳でノボリさん!」

「私達と勝負!」

「数十分前にしたではありませんか…(しかもそのポーズはわたくしとクダリのポーズ…)」

「今度はお姉さんをかけた勝負だから絶対負けない!」

「え、私がかけられるの!?」


いまいち話についていけてない名無しは自分がかけられた事に驚く

言い合いをしているノボリとトウヤとトウコに名無しはどうしたものかと考えた


「…クダリさん、審判やってもらって良いですか?」

「うん、良いよ」

「さっきトウヤとトウコはノボリさんとクダリさんとバトルしたんだよね?だったら今度はトウヤとトウコ、そしてノボリさんと私で戦おう」

「わたくしは構いませんが…」

「えぇー!?」

「お姉さんが相手なのー!?」


ここでは戦えないからと少し開けたところに来てトウヤとトウコの向かいにノボリと名無し、両者の間にクダリが立つ

その時に名無しは横にいるノボリにだけに聞こえるくらいの声の大きさで話した


「ノボリさん、私に作戦があるのでまだポケモンは出さないでください」

「え?えぇ…わかりました」

「用意は良い?じゃあポケモンを出してー」

「…ごめんね。トウヤ、トウコ、クダリさん。きて、ドレディア!はなびらのまい!」

「「「「!?」」」」


ドレディアのはなびらのまいでトウヤとトウコとクダリから自分達が見えないようにした

そしてドレディアをボールに戻してノボリの手をつかんで走り出す


「ありがとう、ドレディア!ノボリさん、行きましょう!」








「はぁ…疲れた…。ノボリさん、突然ごめんなさい」

「いえ、お気になさらないで下さいまし」

「それじゃあ、改めてレストランに行きましょう?」

「はい…!」









(まさか、はなびらのまいで目眩ましとは…)

(お姉さんは絶対に渡さないんだから…!)

(ノボリ、上手くいってるかなぁ…)




 

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