As long time as possible
 

「ノボリさん、コーヒーはブラックで良い?」

「ええ、ありがとうございます」


そう言ってわたくしにコーヒーを淹れてくださるこの方はわたくしの恋人の名無し様でございます

名無し様がバトルサブウェイのスーパーシングルトレインに挑戦し勝ち抜いてきてはサブウェイマスターの一人であるわたくしと戦い、

バトルの後は次の挑戦者が来るか仕事が入るまでこうして休憩室で談笑することがわたくし達の日課となっております

隣に座る名無し様からふわりと良い香りがしたのと、両手でカップを包みコーヒーを飲むその姿があまりにも可愛らしいのと、

こちらを向かれてわたくしと目が合うと頬を染めて微笑むのが言葉では言い表せない程に愛おしくて、わたくしは思わず名無し様に口付けをしてしまいました


「…甘い、ですね」

「もう…私は苦いよ」


名無し様の唇はコーヒーにシュガーとミルクを混ぜていたからか、とても甘い味がしました

名無し様は突然口付けされた事にも苦い味がした事にも怒らず、先程よりも頬を染めながらわたくしに体を預けます

擦り寄ってこられるのは良いのですが、名無し様の髪と吐息が首筋にあたるのがその…ちょっと、困り物でございます


「名無し様、くすぐったいです」

「んー…嫌?」

「嫌ではございませんが…押さえがきかなくなったらどうするのですか」


半分冗談、半分本気でそう言うと名無し様は先程までわたくしの肩に置いていた顔を胸元に移動させました

サラサラとした髪を梳くように撫でているとシングルトレインに次の挑戦者が来たとの知らせが入ってきて、

それに気付いた名無し様は名残惜しそうにゆっくりとわたくしから離れてしまいます


「…次、いつ会えるかな?」


名無し様のバトルの腕はかなりのもので、バトルサブウェイに挑戦してきてわたくしの所まで勝ち抜いて来ることは容易いのですが、

それには時間がかかりますし、運が悪ければ負けてしまう時もあり…

こうして会うことができても一緒にいれるのは次の挑戦者が来るか仕事が入るまでの短い間だけです


「明日は休みですので…一緒に過ごしましょう」

「それならノボリさんの家が良い!」

「わたくしの家、ですか?折角の休みですし、どこか行きたい所は…」

「んー…だったら観覧車に乗りたいな」


名無し様はお願い事をする事も少ない慎ましい方でございます

仕事柄あまり得ることのできない休みが入ってもどこかへ行きたがる事は滅多になく、もう少し我侭を言われても良いのですが…


「じゃああと一つお願いして良い?少し屈んで欲しいんだけど…」

「え?ええ…」


名無し様がわたくしの心中を察したかのようにそう仰られたので少し驚いてしまいました

わたくしはいつの間に考えてることが表情にでるようになったのでしょうか…

屈みながらそう考えているといつの間にか名無し様の顔が間近にあり、唇に柔らかい感触がしてわずかにコーヒーの甘い味が…


「…!名無し、様…!?」

「がっ…頑張ってね!…明日、楽しみにしてるね!」


わたくしが驚いていると名無し様は足早に部屋を出て行ってしまいました

追いかけたい衝動に駆られましたが職務を放棄する訳にもいかず…とりあえず早いところ挑戦者を倒して仕事も終わらせて名無し様に会いに行きましょうか

明日の予定ですが今晩一緒に過ごしてから翌日わたくしの家に行っても良いでしょうし…なによりあんな事をする名無し様が悪いのです





(もしもし、ノボリでございますが…仕事が終わりましたので今から伺っても宜しいですか?)

(うん、良いけど…って、今から!?)

(ピンポーン(チャイムの音))

(早っ!?一緒にいれる時間が増えて嬉しいけど…早っ!)




 

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