無意識の嫉妬…?
 

「うわー、すごい敵の数」

「まさか伏兵がこれほどいようとは…」


今は戦の真っ只中

ななしが織田軍に入ってから初めての戦である

今回は濃姫に蘭丸、光秀にななしと二手に別れて攻める作戦だったのだが

光秀とななしが進んでいた道には多くの伏兵が潜んでいたのだった


「ふぅ…これではきりがありません。私は此処を担当しますので貴女はあちらを」

「はーい、了解」


ななしは言われた通りにこの場を光秀に任せて少し離れた所にある敵陣へと向かう

伏兵の何人かはななしを追おうとするが、彼らは光秀の千棘によりそれができなくなってしまった


「おい、敵が来たぞ!まっすぐこっちに…って、女!?」

「女一人の力で何ができるというんだ?我らの敵ではない!」


その言葉にななしは走る速度は落とさないまま軽くため息をついた


「女一人だからって…油断は大敵、だよ!」

「来るぞ!迎え撃て!!」


ななしは敵の攻撃を避けつつ右手に持った刀で敵をなぎ倒していく

吸血鬼である彼女に刀は不要なのだが、他の軍に吸血鬼の力を知られぬように戦えと信長に言われていた為刀で戦っていたのだ


「これで終わりかな…?」


ひと通り敵を倒したななしは刀を構えたまま意識を研ぎ澄まして、辺りの気配を探る

そして敵の気配は感じなかったので刀を鞘に収めて先程の場所へ戻ろうとした


「…あ、でもあの数だとまだ残っているかも。それじゃあ面倒だなぁ……」


ななしは足を止めて戻るか、待つかで悩みはじめる


「あぁ、どうしよう…って、喉乾いた。いつ来るかわからないけど光秀を待つか、戻って伏兵を倒すの手伝うか…さっきの人の血で我慢するか…」


喉の渇きを感じて、今度はこれをどうするかで悩み始めた

光秀の血の味はななしの好みだったので、ななしはできればそれを飲みたいと思っているのだが…

それだと待つのも戻って伏兵を倒しきってからでもどちらもいくらか時間がかかってしまう

それに比べて先程倒した敵の血なら今すぐにでも飲める


「うーん…仕方無い、さっきの人の血にしよう」


とりあえず今は喉の渇きを少しでも潤したくて、ななしは近くに倒れていた敵の一人の腕を掴んで口元に近づけた


「いただきまー「何をしているのですか」…あ」


もう少しで腕に牙が刺さる所で頭上から声がして、ななしは一旦口を離して上を向いた

するとそこには若干不機嫌そうな表情の光秀がいた


「何って、喉が渇いたから…血を飲もうかと思って」

「貴女は私の血の味が好きなのでしょう?なら一生私の血だけを飲んでれば良いんですよ」

「…それってある意味求婚?」

「…なんでそうなるんですか」


ななしは言葉の意味がいまいち分からず、適当に思いついた事を聞くと光秀は呆れたような表情をした


「あれ、一生味噌汁を作ってくれって感じのやつかと」

「断じて違います」

「じゃあ光秀がいない時は?私に飢え死にしろと?」

「そうです」

「即答!?飢えても死ぬことはないけどさぁ…ひどくない?」


落ち込んで俯くななしに、光秀は自分の腕を軽く切ってななしの目の前に差し出した

それに驚いたななしは目を丸くさせて光秀の腕と顔を交互に見る


「え、いいの?」

「はい、喉が渇いているのでしょう?」


ななしは嬉しそうに頷き、小さく頂きますと言って血を啜った


「満足ですか?」

「うん!」

「そうですか、それは良かった…」


血を啜り終えて満足気なななしに、光秀は差し出していた腕を下ろしななしに向かって鎌を構えて怪しく笑う


「え…え、何?」

「何って、代償をいただこうかと」

「え゛!」

「今日はどのようにしましょうかねぇ…ククク」

「ままま…待って!まだ戦の途ちゅ…、…っ!!」





END




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