No Life Princess
 

「喉渇いたよ…って此処、誰か生きてる人はいないの…?」


ななしはフラフラとした足取りで荒れ果てた町中をさ迷っていた

視界が霞み、転がっている死体に躓きながらも生きている人を探す

少し先の方に動いている小さな人影を見つけたななしは力を振り絞ってその人影に駆け寄る


「ちょっと、そこの君!」

「っ!まだ生きてる奴がいたのか!?」


少年は突然ななしに声をかけられ、びくりと肩を震わせて振り返る


「…血、くれない?」

「はぁ!?」

「喉が渇いて倒れそうなの。お願い、ほんのちょっとだけでいいから…!」

「え、あ…の、濃姫様ぁ…」


必死に懇願するななしにその少年――蘭丸は濃姫に助けを求めるような視線を向ける

ななしは濃姫に気がつくと今度は彼女の前へ行く


「あぁ、貴女でも良いです!どうか、どうかお願いします…!」

「ち、ちょっと、貴女…」


これには濃姫もどうしたものかと困惑した

そしてこの場にはいるが、ななしの眼中になかった信長はその様子を何かを探るように見ていた


「こちらは片付きましたよ…って、これは何事ですか?」


ついに土下座までし始めたななしに濃姫と蘭丸が困りきっていると光秀がやってきた

ななしと蘭丸は光秀に駆け寄り、濃姫は解放されて少し安心した表情をする


「光秀!ちょうどいいや。お前、こいつに血飲ませてやれよ!」

「お願いします…!私、もう倒れそうで…」

「…意味がわかりません。…ですが、まぁ…良いでしょう」


自分に頭を下げてくるななしを暫く見て、光秀は何かを思い付いたのかニヤリと笑いななしの願いを受け入れた

そして自分の腕を軽く切り付けてななしに向けて差し出す


「どうぞ」

「あ、ありがとうございますっ!」


ななしは光秀の腕に口を寄せて血を啜った


「うわぁ、本当に飲んでる…」


その様子を見て蘭丸は小さな声で呟く

濃姫も口には出さないが驚いた表情をしている

やがてななしは満足したのか口を離した


「本当にありがとうございます。助かりました!なんとお礼すれば良いの、かっ…ああぁっ!!」

「礼には…貴女の苦痛に泣き叫ぶ姿を頂きます」


ななしは腹部に感じた痛みに悲鳴を上げた

それを見ている信長は何かに気づいているようで薄く笑みを浮かべている

光秀が笑いながらななしの腹に突き刺した鎌を大きく降りあげると、

ななしの体は宙に浮いた後、勢い良く地面に叩き付けられた


「っ!…、……」

「あぁ…とても良い鳴き声でしたよ。クッ、ハハハハ!」


腹が半分以上切り裂かれ、ななしは大量の血を流しながら痙攣している

しかしやがて動かなくなったのでその場にいた者はななしは死んだと思っただろう

ただ一人…信長を除いては


「…いっ、たいなぁ」


皆がななしに背を向けかけ時、死んだはずのななしがフラつきながらも立ち上がった

蘭丸と濃姫、そして光秀は信じられない光景に驚きを隠せないでいる

すると今まで黙っていた信長が口を開いた


「貴様…よもや吸血鬼の一族か」

「あ、はい。私は吸血鬼一族の…これでも一応姫です」

「姫!?…っていうか本当に吸血鬼なのか!?」

「そうだよ。お腹の怪我はもう塞がってるし、それに…ほら、牙」

「うわぁ、格好良いー!」


人間では考えられない吸血鬼ならではの肉体再生能力で元通りになった腹部

そして鋭く尖った牙を見せると蘭丸は目を輝かせた

それに気を良くしたななしは変身したり、怪力を発揮してみせたり空を飛んだりする


「今は昼ですよ?太陽も出ていますし、灰にはならないのですか?」

「人間にはそう思われているみたいですが平気なんです。…日光はあまり好きじゃないけど」

「…貴様、名はなんと言う」

「え?えっと…ななし、です」

「ななしよ…我が軍に入れ」

「…!信長様、蘭丸は賛成です!」

「働きさえすれば我が城に住むことを許可しようぞ」

「え、で…でも…」

「…此奴の血を飲めば飢えに苦しむこともなかろう。どうだ、悪くはあるまい」

「信長公!?」


光秀を一瞥して言う信長にななしは先程飲んだ光秀の血の味を思い出す

喉が渇いていたからか、彼の血は酷く美味しく感じた

誰かの下につき働くのは好きではないが、血が毎日飲めるのなら…


「…わかりました、入ります!」

「やったー!ななし、俺は蘭丸って言うんだ。…で、信長様と濃姫様と…あれが光秀。これからよろしくな!」

「うん、こちらこそよろしく!」

「城にちょうどななしに合いそうな着物があるのよ。戻ったら着てみないかしら?」

「着物…!憧れてたんですよ〜、楽しみにしてますっ」


信長が歩きだしてななし、蘭丸、濃姫も歩き出す

光秀はまさか自分の血を条件に出されるとは思わなくてしばらくその場で固まっていた

そして先頭を歩く信長、楽しそうに談笑するななし、蘭丸、濃姫を見て仄かに笑う


「…いいでしょう。こうなったら愉しめるだけ愉しまさせていただきまししょうか…フ、フフフフ…!」





END




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